『ひとつだけ訊いていいかな。
僕たちが憧れたあの偉大な剣客は、今の僕らのように笑えていたかい?』
『くだらねぇ事を訊くな。こんな熱い試合を楽しめねぇヘタレがラストサムライなんて呼ばれるわけがねぇだろうが!』
命のやりとりの最中、思わずこぼれる笑い。
夢枕獏の格闘小説で、強さを求める者の多くが経験する瞬間。
ノーガードで相手の顔面だけを殴り続けながらボクサーが、ひたすら関節を極め合いながらレスラーが、無意識のうちに笑う。
「楽しいなあ」とつぶやきながら。
「落第騎士の英雄譚/第6話~8話・剣士殺しⅠ~Ⅲ」
(2015年11月/大沼心監督)
ラストサムライの異名を取る剣客・綾辻海斗は2年前、道場破りに来た倉敷蔵人に破れ剣を持てぬ体に。
父と道場を同時に失った娘・絢瀬は仇討ちと道場の奪還を目指し、七星剣武祭に挑むが7戦目の相手が一輝。
試合前に1日1回しか出せない一刀修羅を使わせ、試合場にもトラップを仕掛ける卑怯博覧会で一輝に挑んだ絢瀬でしたが、その全てを受け止めた一輝に完敗。
『ボクはただ…父さんのようなかっこいい剣士になりたくて…。黒鉄君、ボクを…助けて』
ここから余計なエピを挟まず、一気に逆道場破りに雪崩れ込む展開がいい。
敵役の蔵人が戦いに関しては小細工無しという真正面キャラなのも燃えます。
八岐大蛇vs天衣無縫(中二って言うな!)
この道場で敗れたラストサムライが最後に発した言葉「すまない…」の真意が分かるところは泣けます。
お色気を封印して戦いに特化した7話8話は久々に観た“男の子”アニメでした。
ネットの評価はアンチ優勢ですが、結構好きです、この作品。