「It's got his bloodeverywhere, look what happened to O.J.」
(そこいら中、奴の血がべっとりだ。O.J.も逮捕の決め手は血痕だっただろ)
「Yeah, but didn't O.J.go free?」
(そうね。でも釈放されたでしょ)
「That's not the point!」
(そーゆー事言ってんじゃねー!)
正攻法なサスペンス・スリラーでありながら、要所要所に軽いギャグを挟んでくる。ある意味、円熟の境地と言えるかもしれません。
(2007年/スチュアート・ゴードン監督)
やった! 今夜はパーっと行こう! 酒と男とドラッグよ!
トーマス(スティーヴン・レイ)は失業者。家賃滞納が祟って家無し金無し仕事なし。
公園デビューも果たせず、浮浪者に貰ったカートを押して数ブロック離れた教会へ。遠い。そして寒い。
「クソ、こんな事なら留置所にぶち込まれた方がマシだった」
トボトボと道を渡るトーマスにラリリ+携帯という心も体も脇見運転なブランディの車が一直線。
哀れトーマス。頭から景気よくフロントグラスに突き刺さり、上半身車内、下半身ボンネットという半身浴。脇腹には折れたワイパーが昆虫採集のピンのようにスライド・イン。
いきなりの熱い出会いにブランディ大パニック。あろうことか、トーマスを突き刺したまま自宅ガレージにピット・イン。
どうする? 今更病院には行けないし。第一そんなことしたら折角の昇進が…。まあ、済んだ事は仕方がないわ。あとはこの死体を片づければ…。
「Help Me…」
げ! 生きてるわこいつ! どどどどーするよ、わたし!?
頭ドレッド(恋人は黒人の売人)なミーナ・スヴァーリのビッチぶりが“いい感じ”。
スチュアート・ゴードンなので、てっきり車に何かが憑りついて襲ってくるホラーだと思っていましたが、実に真っ当なサスペンス・スリラーでした。
“ラヴクラフトだけがゴードンじゃねえぞ”って感じでしょうか(類義語:“ゾンビだけがロメロじゃねえぞ”)。
話としては小粒ですがベースは実話(あくまでInspired By A True Story)。
実際に起きた事件は2001年、黒人の女性が運転する車が白人のホームレスを跳ね上げ、ホームレス突き刺したまま、自宅に戻り死ぬまでほったらかしにした、というもの。
「白人を殺してやったわ!」という自慢話が仇となって逮捕。懲役50年。
実話通りに映像化しても面白くないので、そこは映画的な展開に。
ユズナと絡まないゴードンの一面を見た気がします。