クーデターものの定石はその動機と準備をきっちりかっちり描きこんで、決起を中盤のクライマックスに、その顛末を終盤にもってくることである(と今勝手に決めた)。
なので、時代背景をナレーションで済ませ、アバンで密会、タイトルで決起という立ち上がりは『え、いきなりですか?!』
勢いがあっていいっちゃいいですが、持久力が…。
脚本が笠原和夫で、撮影が森田富士郎。役者も脇を東映オールスターズが固めているので、どこから見ても東映活劇なのですが、残念ながら製作は松竹(奥山和由)。
男のドラマどころか恋女房を思い出してはメソメソしている青年将校ズに「笠原脚本にしては全然血が滾らないなあ」と訝しんでおりましたが、どうやら奥山が内容変更の圧力をかけていたようです。
笠原氏は「岡田さん(東映)がプロデュースしていればもっとちゃんとしたものが出来ていた」と述懐しています(便利だなあWiki)。
とまあ、内容に関してはこの辺にして、本作の見所は戦車ですよ、戦車。
鎮圧部隊が実際に使っていたのは八九式中戦車(ガルパンでバレー部率いるアヒルさんチームが乗っていた奴ね)ですが、これを模したレプリカ戦車が3台。
何とブルドーザーを改造して作ったそうで、それならキャタビラ走行も納得です。
驚いたことにこの3台、現存しています。
2台は夕張の「石炭の歴史村」隣にある休園中の公園の中に、1台は那須の「戦争博物館」に。
夕張は野晒し、那須も野外展示なので相当劣化していると思いますが、ちょっと見てみたいですね。
夕張は五社監督が寄贈したようです。戦争博物館の取得経緯は不明ですが、アームズマガジンの89年4月号に「戦車売ります」(出し値150万円)という広告が出ていたようなので、そこから買ったのかもしれません。
夕張は無理ですが、那須は行ってみたいな…。