
『酔っ払い、ヤク中、死に損ないのヤクザ、皆役立たずだ。だが俺たちには神様、42ドル50プラス1マイル50セントの大事なお客様だ!』
119番を無料タクシーの予約センターだと思っている戯け者が後を絶たない日本と違い、(州によって違うようですが)アメリカの救急搬送は民間事業。つまり有料。
ただし、急患を運べるのは最初に現場に到着した救急車だけ。
怪我人・病人争奪戦。
『走れ走れ!救急車!』(1976年/ピーター・イエーツ監督)
原題は“MOTHER, JUGS &SPEED”。直訳すれば“母ちゃんと水差しと速度”になりますが、これ全部登場人物のあだ名です(エマーソン、レイク&パーマーと同じ構文)。

「タクシードライバー」と同年。艶っ艶のハーヴェイ・カイテル。
MOTHERは現場のリーダー格、ビル・コスビー(「殺人者にラブソングを」)、
JUGS(単数だと取っ手付きの水差しですが、複数形になると乳房になります。つまりデカパイ)は、紅一点ラクエル・ウェルチ、
そしてSPEEDは(ヤクに詳しい事からついた)休職中の警官、ハーヴェイ・カイテルのニックネームです(“マカロニ、ジーパンそしてテキサス”と同じ構文)。

いささかまとまりのない作りではありますが、ピーター・イエーツ監督らしく、救急車同士の(あるいは救急車とパトカーの)カーチェイスを織り込んだり、患者を乗せたまま坂道を疾走するストレッチャーといった体を張った笑いを盛り付けたりそこそこ楽しませてはくれます。

唐突に挿入される不幸は正しく70年代です。
にしても久しぶりに聞いたなあ、ピーター・フランプトンのSHOW ME THE WAY。

★ご参考