確かに“不条理”“うっちゃり”“投げっ放し”は、かつての三池のトレードマークでした。
最後の最後にドラマの本質を足下から崩してしまう。所謂「ありえねー!」な展開。
しかし、崩すためにはまず積み上げないと。
「デッド・オア・アライブ 犯罪者」も終盤まで綿密にドラマを組み上げたからこそ、ラストの“んなアホな(唖然茫然)”なカットが活きているわけで。
本作は積み上げたブロックを崩しているわけではありません。最初から部屋中にばら撒かれたブロックを麻雀牌のようにかき混ぜているだけです。
私も歳をとってしまったのか、ただ破綻しているというだけでそれを礼讃するのはちぃっとばかり抵抗が…。
噛まれたらヤクザになる…なんじゃそりゃそりゃな設定(一応ヴァンパイアもの)はOKです。
「極道恐怖大劇場 牛頭(ごず)」に連なるヤクザ・ホラー…なのですが、ネタの全てがやり逃げ、尻切れ、ヤマ無しオチ無し意味不明。
カッパが出てきた段階で“これは(外したかも…)”と思いましたが、終盤の“カエルくん”登場でダメ押し。
この混沌と退廃こそ三池だ、という意見も分からなくはないですが、ものには限度というものが(10年後にはカルトになっているかもしれませんが)。
まともな人間で異彩を放っていたのは高島礼子。
肩書きが若頭で役名が(IMDbによれば)Sosuke Zemba。男かよ!
ヤクザが増殖してカタギがいなくなってしまう(ヤクザの寄生先がなくなってしまう)事を憂えた高島はビニールハウスでせっせとカタギの養殖を(嗚呼、自分でも何を言っているのか分からない!)。
挙句、耳から脳みそが液ダレ噴出↓(何と戦っているんだ、この人は)。
ラストのいい加減さはいつもの三池節でしたが、最早意外性も何も…。
原点をどこに置くかは難しいところですが、私は「極道黒社会 RAINY DOG」とか「FULL METAL 極道」のような肌触りの作品が観たいです。