
ルイジアナの湿地帯。偵察想定の軍事教練。楽な行程のはずでしたが、ちょっとした悪ふざけが元で血の凍る体験をすることに…。
「サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出」(1981年/ウォルター・ヒル監督)
南部です(もうこれだけでチビチビ)。ルイジアナ州兵ブラボー小隊9名(ウォリアーズと同じ人数!)が湿地帯を抜ける偵察教練に。
形式的に武装はしていますが、弾薬は空砲。
雨で湿地帯の地形が変わり沼地が拡大。向こう側に渡るために現地人(ケイジャン)の小舟をガメたのが運の尽き。
更にお調子者が冗談で空砲乱射。空砲とは知らないケイジャンは即座に反撃開始。隊長の右側頭部を正確にヒット。

パニックに陥ったブラボー小隊は次々と船から転落。無線も地図もコンパスも流され、丸腰同然でケイジャンの縄張りから脱出を図りますが…。
これ完全にホラーです(ブアマンの「脱出」と同じ箱)。しかも、かなり怖い。

ケイジャンに関しては「新アリゲーター 新種襲来」で詳しく書いたのでそっちを参照してもらうとして、今回は相対する州兵について。
『平時は市民、有事は兵士』というスローガンが何度か引用されますが、言葉の通り民間人による軍事組織(民兵)。
アメリカ軍の予備部隊として、兵員・部隊・サービスを連邦軍に提供することと、アメリカ国内における災害救援、暴動鎮圧などの治安維持を行うことが主な任務。
要するに普段は別の仕事やってるおっさんお兄ちゃんです(「ランボー」を坑道に追い詰めてランチャーぶっ放して『ひゃっは~!』な記念写真撮ってた連中、あれが州兵です)。

ちゃらんぽらんな部隊にあって、唯一面構えが良いのが、デヴィッド・キャラダインとパワーズ・ブース。
何とか湿地帯を抜けた二人が辿りついたのはケイジャンの村。
何の祭りか御陽気に歌い踊り飲み喰いしている村人に混じってほっと一息…のはずなのにここが一番怖い。ちょっと「2000人の狂人」を思わせます(あれも南部だったな…)。
ラストもハッピーエンドのはずなのに全然ハッピーエンドに見えません(「悪魔の追跡」を観ているみたいだ。←こっちはテキサスだったな)
音楽はライ・クーダー。ウォルター・ヒルの才気が迸った1作です。
原題のサザン・コンフォートは、オレンジやピーチ、レモンなど幾種もの果実とハーブを原材料に製造されたリキュール。

ジャニス・ジョプリンが愛飲していたことで有名ですが、滅っ茶甘いお酒です。
意味は「南部の安らぎ」「南部の歓び」。実に恐ろしいタイトルです。
★ご参考