昨日のキャノンフィルムズの流れで、メナヘム・ゴーランの未公開監督作を。
「サンダーボルト救出作戦」
(1977年/メナヘム・ゴーラン監督)
エンテベ空港事件もの3番槍ですが、1番槍「エンテベの勝利」のメタコケ(記録的不入り+アラブ諸国からの外圧による1週間打ち切り)が尾を引いてオクラ入り。
事件の背景やら顛末やらは2番槍「特攻サンダーボルト作戦」をご紹介した時に触れているのでそちらを御参照ください。
OPはエールフランスのエアバス実機を使って突入シミュレーションを執拗に繰り返す特殊部隊の訓練風景。
結局、この訓練は不要(人質が空港内施設に移動したため)となるのですが、掴みとして十分な絵柄になっています。
ハイジャック発生からの対応描写が目茶スピーデイ。
誰が何者なのか分からないうちに、話が首相、外務省、国防省に伝達されていく様子を細かい画の積み重ねだけで表現。
こういうセリフ無しの展開って実に“映画”的。メナヘムが期を見るに敏なだけの山師ではない事がよく分かります。
ハイジャック実行犯となるクラウス・キンスキーとシビル・ダニングがいい感じ。彼らと言い、特殊部隊を率いるヨナタン・ネタニヤフ中佐と言い、死に方にタメがない(死が常に即物的である)というのはドキュメンタリー性を狙った演出なのか、ゴーラン監督の生死感なのかちょっと気になります。

余談ですが、シビル・ダニングって代表作が「メテオ」「エアポート80」「宇宙の7人」「ハウリングⅡ」という実に香ばしいキャリアの人で親近感湧きまくりです。
話はダレる事なくパンパン心地良く進むのですが、反面、犯人グループの背景とか要求とかアミンの思惑とか交渉の実態とかを記号的にしか描いていないので、事件を知らない現代の人が観るとちょっと判り難いかも。
事件報道にリアルタイムで接していた人にとってはこれで十分だったのかもしれませんが、後年という時間軸と国際マーケットを考えたら、そこは言葉で補足してあげても良かったのではないかと思います。
そういう意味では「特攻サンダーボルト作戦」の方が親切ではありました。