『これから坂本ば地獄の釜へ追い込もう所ですたい。わしが坂本に一番槍ばつけるけん、あんたらも今すぐチャカ揃えて戦争の用意ばしないや。あんたらも極道なら政治政治言うとらんと、ここらで男に戻りない』
後先結果は関係なし。日本最大組織も眼中なし。親の仇を討つ、頭を殺(と)る。
鎖を噛み切った手負いのはぐれテロリスト、菅原文太。
「新仁義なき戦い 組長最後の日」
(1976年/深作欣二監督)
新シリーズ三部作(話の繋がりは一切無し)最終章。
チンピラ同志のささいな諍いが、大阪を拠点とする国内最大組織・坂本組と九州・下関・広島の連合組織・七人会の代理戦争に発展。
的にかけられた七人会の幹部・岩木定春(多々良純)の跡目を継いだ野崎修一(菅原文太)は“返し”の準備をするものの、七人会上層部が坂本組とあっさり手打ち。
“諦めの悪い男”野崎は大阪も九州も敵に回して、坂本組のてっぺんを狙う。
実録のレーベルからは遠ざかりましたが、話がストレートで分かりやすく、筋立てとしては最も面白いかもしれません(あのテーマ曲も復活!)。
ただ、役者が…。絢爛豪華なスター顔見せ興行だったオリジナル5部作と比べるとあまりにショボイ。看板張れるのはせいぜい成田三樹夫くらい。
和田浩二、松原智恵子じゃ日活青春路線だろ。地井武男、藤岡琢也、桜木健一…北の国から渡る世間は刑事くんじゃ東映の看板が泣くぞ。
そんな中、MVPと言える活躍をしたのが、梅津栄。
死んだ岩木定春に仕えた聾唖の使用人・東吉。野崎の首を獲って坂本に差し出そうとする七人会の宿を張り込み、タレ込んだ裏切り者・地井武男を屠り、暗殺部隊のリーダー八名信夫を討ち取るも蜂の巣。野崎に姐さんから言付かった逃亡資金を渡して笑顔で絶命。
一世一代の儲け役だったのではないでしょうか(梅津さん、今年8月6日に肝硬変でお亡くなりになっていました。88歳。ご冥福をお祈りいたします)。
ついに辿りついた坂本(小沢栄太郎)は歳と病気で虫の息。
『野崎、親分はもうアカンのや。助からへんのや! そんなお人を撃ったかてしゃあないやないけ。頼むわ、静かに死なしたげてくれや、頼むわ! 野崎ぃ!』
果たして野崎の決断は?
深作監督による仁義なき8部作、これにて幕。本当に楽しませてもらいました。