
ああ、これはノワールだ。
たとえ“実録”を謳っていたとしても、どこか記号的でマンガチックでちょっとアホっぽいイメージはVシネやくざモノの大きな魅力であると同時にウィークポイントでもありました。
この既存のリズムを意図的に外す試み。“香港ノワール”の焼き直しと言ってしまえばそれまでですが、やはり新鮮。
「新宿暴力街 華火」(2007年/岡田主監督)
抗争集結のため、敵対する仙道組組長(峰岸徹)を射殺した大畔組若頭補佐・弓削英雄(松方弘樹)。
偶然、その場に居合わせた若き刑事(俊藤光利)。
8年後、仮出所した弓削が見たのは何も変わっていないどころか、一層腐敗を極めた新宿。
大畔組組長代行は仙道組と結託(更に警察とも癒着)して覚醒剤から少女売春までやりたい放題。
「堅気の衆に迷惑はかけない」と言う昔ながらの侠客と「この腐った街は俺が正す」と吼える熱血刑事。

立場も年齢も違う二人。互いの中に見出した共感する理想と共通の敵。こんな関係どこかで…嗚呼「狼/男たちの挽歌・最終章」だ。
建てつけだけ見れば凡百のやくざ映画フォーマットかもしれませんが、この黒社会な手触りは貴重。
『時代は変わった? 俺は変わっちゃいねぇよ』
松方兄ィの現役続投宣言と受け取らせて頂きます。