
別府で誰もが思い出すものと言えば、そう、別府抗争。
昭和32年、「別府温泉観光産業大博覧会」の施設興行権を巡って、地元組織の井田組(本多会系)と石井組(三代目山口組系)が対立。400人に及ぶ暴力団員が入り乱れてドスと銃弾の雨を降らせた抗争事件です。
凶器準備集合罪(刑法208条)新設の直接的契機となった歴史的事件でもあります。

そして、この抗争で活躍したのが石井組組長の舎弟であった夜桜銀次。よもや銀次の抗争デビュー戦ゆかりの地を訪ねることになろうとは。僥倖という他ありません。
さて、別府で観光と言えば何はさて置き“地獄巡り”。別府の町には様々な地獄が点在しているのですが、これがことごとく“とんだ一杯喰わせもの施設”。
旅の醍醐味とは各地の“とんだ一杯喰わせもの施設”に決して安くはない金を払って入場し、『うおお、また騙されちまったぜい!』と天を仰いで嘆くことだと思っている私にとっては神の采配とも言えるプログラム。
「血の池地獄」は分かります。血のように赤い湯(摂氏78度)が湧き出る様は正に地獄。

でもコバルトブルーのお湯が出るってだけで「海地獄」は無理あるだろ。そもそも「海地獄」って何だよ。青い湯と湯気で気分はすっかり“♪ハビバノンノン”。

鬼山地獄に至っては鰐飼ってるだけよ。温泉浸かったワニがピクリとも動かずまどろんでいるだけで、改装前の熱川バナナワニ園を小さくしたようなもの。

きっと大昔に「観光ったってここ温泉しかねえぞ」「全部“地獄”ってコンセプトで括っちまえばいいんじゃね?」「おお、赤いお湯は血の池地獄か。じゃ青い湯は?」「海地獄でいいだろ」「間欠泉は?」「竜巻地獄」とかいう会話があったのでしょう。
それでも以前はもう少し地獄っぽい景観だったんだとか(大分観光のガイドさんの受け売り)。要するに荒削りな作りになっていたのを観光地っぽく手を入れてしまった(整地してしまった)ために、風光明媚な地獄になってしまった、という事のようです。
“墜ちる前に見ておけ”とは原田美枝子主演「地獄」(1979年/神代辰巳監督)のキャッチ・コピーですが、こんなのどかな地獄なら墜ちてみるのも一興かしらと思った社員旅行でした。