『以上が彼の生涯だ。
得たものより失ったものの方が多い。
妻や友人たちを失くし、正気すら危うく、
時間を浪費した』
以前、カーペンターの研究本「恐怖の詩学/ジョン・カーペンター」を紹介した際、
なんて事を書きましたが、この反骨3兄弟(←今勝手に命名しました)の長兄、サム・ベキンパーのドキュメント映画です。
「サム・ペキンパー/情熱と美学」
(2005年/マイク・シーゲル監督)
(2005年/マイク・シーゲル監督)
もうオープニングから音楽が哀しげ寂しげ鎮魂歌。時代に取り残された男を悼む挽歌な香り。
原題が「PASSION &POETRY: THE BALLAD OF SAM PECKINPAH」。
言いえて妙なタイトルです。
構成は解説というよりは目撃者の証言。様々な目撃談の積み重ねでペキンパーのトラブル・メーカーぶりが浮き上がってきます。
ある時はプロデューサーと、ある時はスタッフと、そして家族と。
酒に溺れコカインに嵌り、気がつけば独り。
証言者としてジェームズ・コバーンやアーネスト・ボーグナインの姿が見られるのも僥倖。
『メキシコ人が実弾撃ってきやがって』
洒落にならない話を嬉々として語るボーグナインが妙に可愛い。
『(「ワイルド・バンチ」の演出で悩んでいたペキンパーに)好きなようにやればいいんだよ。血の雨を降らせてやれ!』
歴史的アドバイスだったのではないでしょうか。
人として駄目駄目でも監督として最高。映画監督は破綻しているくらいが丁度いいと思います。