『一度負け癖がついた犬はな、それっきり噛み付くことさえ忘れちまうんだ。俺達だって同じことよ。一度逃げ足を覚えた奴は絶対に浮かび上がることはできねえよ』
仁義なき戦い前年、無政府主義の原野を駆け抜けた野良犬の挽歌。
「現代やくざ 人斬り与太」(1972年/深作欣二監督)
菅原文太が清々しいまでに最低(笑)。
愚連隊のリーダーとして大暴れ。喧嘩、カツアゲ、女は集団レイプした挙句、女郎屋に売り飛ばすえげつなさ。
新興やくざの滝川組に目をつけられ“みかじめ”を要求されますが当然無視。ボコられたら速攻仕返し、銭湯で♪ババンババンバンバンな組員を包丁でささらもさら。
刑務所でもボコられますが、即三枚下ろしにして独房経由牢名主。どうもこの人の人生は、大暴れ→袋叩き→100倍返し→大暴れの繰り返しのようです。
出所後ははぐれやくざ小池朝雄と組んで大暴れ。再び滝川組と敵対しますが…。
本作、影の主役と言っていいのが、滝川組に反目する矢頭組組長の安藤昇。
『昔の俺達もあんな風だったか?』
『そうですね。あれ以上だったかもしれねえが…』
『今は昔か…』
文太の傍若無人さに若い頃の自分を重ねて何かと支援。しかし歯止めの効かない文太は関西の大組織、大和会の会長にまであやをつけてしまい…。
安藤昇には常について回る枕詞ですが、“本物の迫力”に慄きます。部下に目だけで「(滝川組の組長を)殺ってこい」と伝える時の目力、いや顔力の凄まじさ。
(殺ってこい)(分かりました)
「広島死闘篇」の山中(北大路欣也)とも大友(千葉真一)とも一味違う(勿論「仁義の墓場」の石川力夫とも異なる)破滅型アナーキスト、菅原文太が堪能できます。