お好きな人なら色々なものが透けて見えると思います。
「ウルトラQ/変身」「鉄男」「ヘルレイザー」「ザ・フライ」「震える舌」…。とりもなおさず監督の好みが反映されているのでしょう。
同じ自主映画なら飯田譲治監督の「キクロプス CYCLOPS」辺りとも近い手触りを感じます。
獣のような咆哮と痙攣。何の前触れもなく襲ってくる夫の発作に悩む妻。
やがて夫の体にある変化が…。
「へんげ」(2011年/大畑創監督)
後に「ABC・オブ・デス2」の一編も手掛ける大畑監督の商業デビュー作。
メインタイトル後に“とある夫婦の、愛の物語……”の一文。最後まで見るとこの“愛”の意味するところが分かります。
へんげとは夫の肉体的・精神的メタモルファーゼを指していますが、作品のジャンル自体もお話の進行と共にへんげしていきます(このハンドル捌きはお上手。正にバリアフリー)。
医療ものと見せかけてオカルト、と見せかけてSF、ホラー、そして最後には…。
ううむ、まさかあそこまで豪快に舵を切り倒すとは。というか、あのやり逃げこそが本作の目的なのでしょう。
特撮(と言うか特殊造型)のヘボさと演出のヌルさ、役者のリアクションの不自然さなど、自主っぽい稚拙さはそこかしこにあるのですが、ラストのやり切った感が共有できる人には十分アリな作品です。
※写真はネタバレになるので、今回はソフトのジャケ写のみで失礼。