デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ボクはニート探偵。死者の代弁者だ。 神様のメモ帳[北米版BD-BOX]

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『すでに死んでしまったもの、失われてしまったものに対して何か意味のある仕事が為せる職業は、この世にたったふたつだけしかないんだ。つまり、作家と探偵だ。

作家だけがそれを夢の中で蘇らせることができる。

探偵だけがそれを墓の中から掘り返して情報に還元することができる。

だが、探偵が掘り返した情報は、結局のところ、あらかじめ神様のメモ帳に記されている事実にすぎない』


神様のメモ帳?』


神様のメモ帳。素敵なくらい、無責任な言葉だろう?』

 

神様のメモ帳[北米版BD-BOX]」

20117-9月放送/桜美かつし監督)

 

事務所から一歩も外に出ず、ドクペを主食にしている年齢不詳のNEET探偵アリスと職を持たない愉快な仲間達。

 

そこに巻き込まれた“他者との接触が得意ではない(むしろ忌避している)”普通の高校生、藤島鳴海。


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飲み終わったドクペは藤島に。
 

軽いタッチの作風かと思いきや、援交、ヤクザ、ドラッグと扱うネタはヘビー級。

 

アニメでは、ヒロイン(鳴海の同級生、篠崎彩夏)が投身という原作第1話を最終エピに持ってくるという時間軸変更を行っています。

 

まあ、彩夏に感情移入させた上で投身させた方がインパクトがありますし、必然的に彩夏の登場シーンも増えるので、興行的(?)には仕方のない処置ではあったかと。


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ただ残念なのは作品のテーマであるNEETの定義をうっちゃってしまった事。

 

本作を観た多くの人がぶつかるであろう「いや、君ら働いちょるしNEETちゃうやろ」という疑念に応えていないので、NEETという単語が出てくる度にモヤモヤとした感覚に包まれてしまいます。

 

「きみはニートというものを根本的に誤解しているようだね。NEET2番目のEEmployment、つまり雇用職だ。個人事業主には該当しない。あとは当人の考え方の問題だよ」

 

ニートというのはね。なにかが『できない』人間や、なにかを『しようとしない』人間のことじゃないんだ」

 

「ちがうのはただ、ルールなんだよ。みんなが双六をやっている盤の上に、ぼくらだけチェスの駒を並べているようなものさ」

 

というアリスの能書き台詞と、(なんか小難しそうなこと言ってるけど要するに駄目人間だろ?)という鳴海の心のツッコミ、この両方があって初めてバランスのとれたNEET観が形成されるのに、ここに全く触れていない。

 

因みに原作に於けるタイトル回収台詞は以下の通り。

 

「どうしてニートになったのかなんて、訊くまでもない。そんなの、理由はひとつしかない。神様のメモ帳の、ぼくらのページにはこう書いてあるのさ。『働いたら負け』ってね。他に理由はない」


「……神様のメモ帳?」


「すてきなくらい無責任な言葉だろう?」

 

もうひとつ、彩夏の事件を通じて鳴海が行き着いた哀しい境地、“人生にはとりかえしのつかないことしかない”がスルーされてしまったのも残念無念。


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神様のメモ帳」北米版BD-BOXは国コード無し、字幕on/off可能な同盟国仕様。全12話をBD2枚に詰め込んで4,500円前後。


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