デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

建てつけは悪くないのですが…。 貞子vs伽椰子

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VSものの本質はエンタメだと思っているので、お話がギャグになろうがセルフパロディになろうが、舵取りに文句はありません。

そもそもこのタイトルで“本格的な恐怖”を期待する人はいないでしょう。

だからこそ、ディテールとか話の整合性にはこだわって欲しかった。

 

「貞子vs伽椰子」2016年/白石晃士監督)

 

VHSが市場から消えて「呪いのビデオ」が都市伝説となった現代。

『あ~呪いのビデオ観てぇ。貞子に会えるなら二日後に死んでもいい』と本気で思っている大学教授・森繁(甲本雅裕)のキャラはナイス。

※本来、呪いのビデオを観た人が死ぬのは1週間後のはずですが、話のテンポをあげるための改竄ってことでよしとします。

女子大生・有里(山本美月)が、友人の両親の結婚式のビデオ(VHS)をDVDに焼くためにリサイクルショップで格安ビデオデッキを購入したら中に妙なビデオが入っていた、という設定もお上手です。

元の持ち主である独居老人は自殺、その死体を発見した民生委も自殺、デッキの稼動チェックをしたリサイクルショップ店員も自殺という畳み掛けもいい感じ。

後半の霊能者バトンリレー(特に常盤経蔵役の安藤政信)も嘘っぽさいかがわしさ含めて合格。

…という建てつけだけ見ると十分及第点ではあるのですが…。

最大の小道具であるはずの「呪いのビデオ」が手ぇ抜きすぎ。「リング」中田秀夫があれだけ凝ったビデオを作ったのに挑む気ゼロ。

伽椰子と俊雄が暮らす例の家、表から見ると住宅街の真っ只中ですが、何故か裏に回ると広大な空き地。その中央にこれ見よがしな古井戸。いやいやいや、ないだろ、それは。

一番の違和感は俊雄くん。小学校低学年のイメージでしたが、出てきたのはどう見ても育ち盛りの中学生。体デカ過ぎ。足長すぎ。幽霊というよりは気の触れた引き篭もり(それはそれで怖いか…)。

霊能者・経蔵とコンビを組んでいる盲目の少女、キャラ立ちは良いのですが台詞回しがびっくりするくらい。役作りの可能性無きにしもあらず、ではありますが喋るたびに現実に引き戻されるのでちょっと困ります。

呪いの家で呪いのビデオ、互いの呪いを優先させるため、遂に相まみえる両巨頭…というシチュエーションは怪獣映画のセオリーで見せ場としては十分ですが、やっぱりコントだよなあ。

本作は「ノロイ」「テケテケ」「カルト」といった白石作品の流れで観た人はすんなり納得かもしれませんが、「ビデオ版呪怨」「劇場版リング」あたりを起点としている人には辛い出来なのではないかと思います。

 

そう言えば、US版貞子(向こうではサマラ)最新作「RINGS」ってどうなったんでしょ?…と思って調べたら今年3月に米国公開されていますね。

世界各国(クロアチアイスラエルウクライナやクエート、マケドニアまで!40カ国以上)で公開されているのに日本は予定がないようです。なんだかなあ。


★これですね。

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