『散る桜…残る桜も…散る桜だ。それでいいじゃないか』
恒例8月15日。今年とりあげるのは、
戦艦大和の水上特攻に関するエトセトラ。色々と言われている作品ですが、冒頭で仲代達矢が幻視する大和の正面雄姿を見ただけでうるっときてしまう身としては、戦わずして降参な負け試合。
確かに脚本は酷いですよ。時代背景が中途半端なナレーション(テレ朝の渡辺宜嗣ってのが苛立ちに拍車をかける)で入る割には肝心な所(海上特攻に至った経緯、大和が簡単に沈められてしまった理由など)はまるっと割愛。
繋ぎのシーンをきちんと押さえていないから場面転換が唐突。
役者も一部難あり。またそのパターンかよ、な仲代達矢、すっかり大根になってしまった鈴木京香、ひとり浮きまくりな中村獅童(批判の的になっている反町と一茂ですが私は良かったと思います)。
若手代表の松山ケンイチ、蒼井優は頑張っていましたが、広島の災厄に遭った蒼井の死に際の様子が化粧ばっちり血色すっきりなのはどうにもこうにも。
ダメ押しだったのが、〆の敬礼。何故に陸軍式?
艦コレの正しい海軍式敬礼ときちんと陸海軍を使い分けているブレイブ・ウィッチーズ
まあ、右手を上げる敬礼は着帽時の作法で、脱帽時は頭を下げるのが礼儀なのでそもそも議論自体が不毛なのですが、それでもこれは不自然(鈴木と池松壮亮くんは仕方ないとして仲代はちゃんとしろよ)。
好みの問題ですが、エンディングに長渕はないわ。
などなど文句はありますが、大した問題じゃありません。一部とは言え大和の実物大セットを作り、掃射を浴びれば四肢四散、死は常に即物的という戦場の真実を描ききった、しかもそれを演出したのが齢73の佐藤純彌ってだけで感慨ひとしおです。
大和が傾きながら沈んでいく描写もいい。「連合艦隊」の景気のいい爆発炎上は映画的ではありますが、こちらの方が真実に近いのでしょう。
で、本作一番の収穫は“木炭バス”が見られたこと。
木炭をエネルギー源とし、後部に積んだ窯で木炭を燃やしてガスを発生させ、そのガスを噴射してエンジンをまわす(不完全燃焼により発生する一酸化炭素ガスと同時にわずかに発生する水素とを回収、これを内燃機関の燃料として走る)木炭バス。
この時代の普及の要因を遡れば開戦原因のひとつにぶつかる実に理に適った小道具です。物凄い黒煙の中、別れの挨拶を交わす松山と蒼井が健気でした(ってか、蒼井に告白されたのに何もしてないってどういう事だ松山?)。