『…絵は? 絵の方は進んだの?』
『あー…それが、なかなか筆が乗らなくてね』
『私は芸術のことなんて教科書以上は知らないけど。
お父さんは本当に画家なの?』
『それを言われると辛いね…絵で食べられてる訳じゃないからね。でも…』
『食べられる、食べられないじゃないの
お仕事も休んで、子どもたちも寝てる。
画家なら、その間に少しでも描くものではないの?』
『ああ…絵って言うのは、そんな合間合間に出来るものじゃないんだよ。それにご飯が出来てたら君も楽だろう?』
『芥川の地獄変で、絵師は自分の娘が焼き殺される姿を描いた』
『そこまでするのは酷いよね。父として、人として…
そんなことしたら君は父を恨むだろう?』
『勿論恨むわ。でも…お父さんが画家で芸術家なら恨まれても描くべきよ。
僅かの隙にでも、子どもに恨まれても描くべきよ。
描かないなら…他の道を選んで。
芸術家になるの?それとも…良き父親になるの?』
『良き父親と芸術家は…両立できない訳じゃないと思うよ』
『お父さんは両立できるほど才能がある人なの?
画家として身を立てられず、父親としても週半分しか働かない契約社員。そんなの末娘の保証金を当てにする、悪い父親よ』
取り上げるのがエライこと遅くなってしまいましたが、このやりとりを見て悶死した人、結構いたんじゃないでしょうか。
「セントールの悩み/第6話B part・本当に好きなことを仕事にすることは果たして幸せなのかな?」(2017年8月13日BS11放送/村田光演出)
各々の家の抱える事情が垣間見える“日常”回。重かったのは委員長・御魂 真奈美(みたま まなみ)の家庭。
神社の長女。一歩間違えれば霊感商法な出張除霊。母親の姿はなく、父親は仕事半分画家半分。幼い妹が4人。そして末娘には某かの障害があるっぽい。
あちこち逃げを打つ父親に正論かます委員長。多分、彼女は父親に画家として大成して欲しいのだ。
だから、全てを投げ打ってでも精進して欲しい。子供を、私たちを、善き父親になることの大義を、隠れ蓑にして欲しくないのだ。
父も辛いが娘も辛い。主人公・姫乃の家庭が超安定(姫乃も母親にベタ甘え)している分、背負っている荷物の重さの違いが際立ちます。
何気にこういうシリアスを突っ込んでくるから気が抜けません。