
『驚いたよ…ホントに驚いた。長生きはするものだな』
初老の男の手に光るパーカッション・リボルバー“カノン”。今はキノの手に、その前は…。

師匠を師匠と呼ぶふたり。相棒、キノ。決して交わらないと思われたふたつの線が交錯した瞬間。
「キノの旅-the Beautiful World-/第10話・優しい国」
(2017年12月8日深夜TOKYO MX放送/笹原嘉文演出)
旅人に対して不遜、不親切と評判の国。店は閉まる、メシはマズイ、近づくのも嫌だ…そこまで言われるとかえって行ってみたくなるもの(気持ちは分かる)。
しかし、その国は国民全員が例外なく親切な、とてもとても優しい国でした。

案内を買って出たホテルの娘・さくらに紹介されたパースエイダー・スミスは腕のいい銃器職人。カノンを新品同様にレストアし、キノに聞く。
『昔、自分の教え子には“師匠”と呼ばせている凄腕のパースエイダー使いが居た。
旅人であちこちの国でトラブルに首を突っ込んでは睨まれたり感謝されたりした。
大分前の話だ。その人のこと…知らないかな?』
『いいえ…知りません』
『…わかった』
そしてスミスがキノに託した一丁の銃。

『誕生当時は“森の人”と呼ばれた。コイツを旅人さんに使って欲しい。
コイツは昔…私が旅をしていた時、何度も身を守ってくれた。
でももう何十年も使っていない…私は年を取ったし旅にも出ない。
コイツはまだまだ使える。私と一緒に朽ち果てさせるのは惜しい…
昔みたいにコイツに旅をさせてやりたいんだ』
嗚呼、森の人はここでこの人から受け継いだのか。こういう展開は堪らなく好きだ。
3日の滞在を終えて出国するキノを総出で見送る人々。どこが優しくない国なんだ? 一人残らず良い人じゃないか。
ホテルの奥さんに手渡された食事の包み。その中に1通の手紙。その手紙を読んだ時、既に優しい国はこの世に存在していませんでした。

滅びの運命を受け入れた国。知っているのは大人だけ…のはずでした。しかし、もう1通の手紙、さくらが書いた手紙には…。
すべての事情が分かった後、もう1回見返してください。ひとりひとりの言動、結婚式、娘に旅を勧める親とそれを拒む娘、別れの挨拶「またいつか」。それぞれの想いに涙が止まりません。
最後に出るタイトル「優しい国」に添えられた副題は“Tomorrow Never Comes.”でした。