「Stop eating that banana while you're crying!」
(泣くか食べるかどっちかにして!)
まあ、直訳すれば「泣いてる間はバナナ喰うのはやめろ」ですが、生きるか死ぬかという時にこういう台詞挟んでくるのは実にいい感じ。監督のセンスを感じます。
「パラサイト・クリーチャーズ」(2013年/マーヴィン・クレン監督)
監督は「ベルリン・オブ・ザ・デッド」撮った人ですね。
舞台はアルプス山脈の気象観測所。詰めているのは地質学の研究チーム3人と施設管理人ヤネック(ゲアハート・リーブマン)、そしてヤネックの愛犬ティニー。
明日は検閲好きの大臣が視察に来る。研究の意義をアピールしなければならないのに観測機器が故障。
ヤネックと研究員のひとりが機器の点検に出向いたら、氷河の一角が真っ赤に染まる異常現象。
更に翌日、同じ場所でダンゴ虫の化け物発見。持ち帰って細胞調べて二度びっくり。
ダンゴ虫に寄生していた赤い細胞は出会ったDNAを片っ端から取り込んで新種を作る“朱に交われば総天然色”なDIY細胞でした。
赤い細胞×ヤギ、赤い細胞×クワガタ、赤い細胞×ダンゴ虫…組み合わせは無限。新種生命のビッグバン。
気色悪いクリーチャーの数々は(鳥とか蚊を除けば)原寸大の作り物。アニマトロニクスには程遠いですが、CGと違い“掴める”存在感は好感度大。
ただ絵的に「これだ!」というビジュアル・インパクトが無いのが残念無念。
カーペンター版「物体X」における、犬顔面ぱっかーん!触手しゅるしゅる!体液ぷっしゅー!脚にょっきーん!なカットがひとつでもあれば長く記憶に残る作品になったと思います。
代わりに大活躍だったのが、ボディチェック大臣とあだ名されるほど視察好きな女大臣(おばさん以上おばあさん未満な高齢大臣)。
如何にも足手まといかつ嫌われ者なポジションですが、この人が使える使える。
周りを気遣い、叱咤し、自らドリルを持ってヤギ怪人に風穴開ける奮闘振り。文句なしMVP。
途中、全滅フラグと思える描写がいくつもあったのですが、そこいらへんは回収せず中途半端な終わり方。
バッドエンドの予感と余韻があれば更に高評価でしたが。
ヤネック役のゲアハート・リーブマンは、ウィーン国際映画祭のオーストリア映画賞(オーストリア版アカデミー賞)最優秀男優賞受賞。