上映時間79分。トワイライトゾーン春の特別編といった趣きのこじんまりさ。この規模でこれだけ破綻した脚本書ける人間も珍しい。
「7500(←ナナゴーゼロゼロと読ませたいらしい)」
(2014年/清水崇監督)
英題は「Flight7500」。ロサンゼルス発東京行きヴィスタ・パシフィック航空のジャンボ・ジェット7500便があれやこれやで大騒ぎ。
まずは乗客の人物紹介。閉鎖空間パニック映画の定石ですが、もうここから面白くない。
女房持ちパイロットとアテンダントの不倫とかどーでもいいし、潔癖症で自己チューの新婚女とか更にどーでもいい。興味の持てないキャラを並べられるのはかなり苦痛。
離陸早々、いかにも怪しい鞄を持った男が何かの発作でご臨終。続いて乱気流で機体の一部が破損して気圧低下、酸素マスクがぶ~らぶら。
ここまでで、今後の展開の選択肢(ミスディレクションとも言う)が幾つか明示されます。
細菌感染か、エアポートシリーズか、ファイナル・デスティネーションか、はたまた蛇かゾンビかゴブリンか(ご丁寧な事に背もたれ裏のモニターに「2万フィートの悪夢」が映っている)。
で、景気よくネタバレしてしまうと、これ「恐怖の足跡」の亜流です。しかもかなり出来の悪い。
最初に発作起こした奴が喀血したり、腕時計の下の皮膚が溶けていたり、如何にも病気(もしくは何かの呪い)を暗示させておいて、その後の回収無し。
死体に掛けられたブランケット剥がした奴がそいつの顔見て絶叫。何を見たのかは(観客には最後まで)分からず。
この死体のアタッシュを開けたアテンダントが絶叫。何を見たのかは以下同文。
だから何を見たんだ、君らは?
死体くんが後生大事にしていた手荷物の鞄からは気色の悪い人形がこんにちは。
これを見た全身タトゥーのヘビメタ姉ちゃんが「これは死神(SHINIGAMI)ね」。
私も死神のイメージって沢山見ていますがこんな死神は初対面。ヘビメタ姉ちゃん更に続けて、
『人はこの世に未練があると死ねないの。未練を断ち切った時に死神が魂を連れ去ってくれるのよ』
ほ~。私も死神の仕事に関して見聞きしていますが、そのようなルールがあったとは初耳です。
このお姉ちゃんはとてもディープな日本マニアで「Angel Beats! エンジェルビーツ」が大好きなのでしょう。
タトゥー姉ちゃんはロブ・ゾンビ版ハロウィンで
ローリー演ってたスカウト・テイラー・コンプトン
で、このお姉ちゃんの個人的生死感が宇宙的理(ことわり)と認定されて話が進みます。
全てが投げっ放し。伏線無視。整合性皆無。いやもう、なんじゃそりゃそりゃです。
大仰なドッキリ演出はうるさいだけで恐怖には程遠く…。
万策尽き果てたか清水、尾羽打ち枯らしたか清水、落日のJホラーは観たくないぞ(古館実況風)。
いやもうとっくにJホラーは落日で、もはや残滓も残っちゃおりませんが…(「パッセンジャーズ」みたいな成功例観た後だと余計に酷さが際立ってしまう)。