エンドクレジットで製作協力として延々表示される病院・医院・クリニック。
まだ続くのか、もう終わるか、いや終わらない。
ようやく終わったかと思ったら今度は九州の県別クレジットが続き…。
もうこの映画に協力しない医療機関は生きていけない(生かしてはおかない?)と言わんばかりの圧迫感。
そう、これは“そういう”映画。
「迷宮カフェ」(2014年/帆根川廣監督)
食い詰めたフリーライター榎木田(大迫一平)がゴシップ週刊誌編集長に掴まされた怪しいネタ。
群馬の山中に訪れた客が次々失踪するカフェがあるらしい。おまけに店主は飛びっきりの美人。巧いこと記事にできたら原稿料200万払ってやる。どうだ?
早速出向くと確かにカフェが。店主も美人。ここまでは情報どおり。聞き込みの結果(あっさり)分かった店の秘密は…。
常連客は自殺志願者。店主のマリコ(関めぐみ)は楽に死ねる薬を渡す代わりにある条件を出していました。
ミステリーかサスペンス、事と次第によってはサイコスリラーに展開しそうな導入部ですが、全部ミスディレクション。お話は大きくヒューマンな方向に舵を切ります。
マリコの出した条件は骨髄バンクに登録して適合者が見つかるまでここで共同生活をすること。
『どうせ捨てる命ならリサイクルしてみませんか?』
は? そうです。この作品は骨髄バンクドナー募集のキャンペーン・プロパガンダ映画なのです。
一旦そっち方面に舵を切ったら自殺も失踪も彼岸の彼方。ヒューマン街道まっしぐら。
スローライフを堪能する自殺志願者。筋肉バカ角田は好演。
元々の目的が“啓蒙”なので、最初の設定は第1弾ロケットのようなもの。切り離して捨ててしまえば顧みる必要もありません。ありませんが…。
なあ、ここに来る人はどうやってこの店がそういう所だって知ったんだ?
花が目印(符合)で「季節のメニュー」が合言葉で、なんて細かい情報はどこに載っていたんだ?
自殺幇助は一種のブラフだし、骨髄取っても死にはしないので「失踪」の事実もないわけですが、では何故失踪の噂が立ったのか。
あと、この自殺志願者たちは全員、骨髄移植を契機に贖罪やら懺悔やらを済ませて各々の生活に戻っていくのですが、んな都合のいい話あるかぁ。
「骨髄提供したんだから約束どおり楽に殺してくれ」って奴はいなかったのか? 今後そういう人が出てきたらどう対処するんだ?
何と言うか「利用された」感が強くて素直に入り込むことができませんでした。
※骨髄移植についてはとても勉強になりました。