エルマンノ・オルミ監督がお亡くなりになりました。
5月5日。イタリア北部アジアーゴの病院で妻と子どもたちに看取られながら。享年86歳。
オルミ監督と言えばやはり1978年度カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「木靴の樹」でしょう。
19世紀。北イタリアの寒村ベルガモ(オルミ監督の故郷でもある)で暮らす農民たちの四季。日常の風景をひとつひとつ丁寧に積み重ねていく187分。
手もとのチラシには「全世界を感動の涙であらう映像詩人オルミの名作!」の文字が躍っています。
動く絵画と評される事の多い本作ですが、監督の視点はちょっと違っていたようで。
『絵画に似た画づくりは徹底して避けたつもりで、自然光で撮ることだけを心がけました。さもないと、19世紀を背景とするカラー映画の類型にはまってしまいますから』
(公開当時のパンフレットに掲載された監督インタビューより)
それが結果的に“絵画的”と言われ、“映像詩人”という肩書きに。
本作を観たのは1979年8月。今はなき日劇文化で(「惑星ソラリス」も「戦艦ポチョムキン」もここで観ました)。
日劇文化は所謂2番館で、ロードショーは同年4月の岩波ホール。
当時、わたしは“岩波ホール症候群(フランス映画社症候群とも言う)”というはしかに罹っておりました。
「株式会社 ザ・カンパニー」(サタジット・ライ監督)、「アメリカの伯父さん」(アラン・レネ監督)、「約束の土地」(アンジェイ・ワイダ監督)、「山猫」(ルキノ・ビスコンティ監督)などあしげく通っておりました。
曼荼羅畑とは縁遠い作品ばかり(笑)。どうもビスコンティで挫けたようで、これを最後に岩波ホールには足を向けなくなっております。
やはりわたしには“ホラーテラーで皆殺し”が性に合っているようです。
追記:2022年7月29日、岩波ホールが54年の歴史に幕を下ろし、閉館しました。なんだかんだ言って青春のモニュメントみたいな所なので、残念至極です。ありがとう&おつかれさまでした。