
『仕事…私もやる』
『別に気を遣わなくもいいんだよ』
『ううん、仕事してお金貰うからご飯食べられるんだもん』
『それは誰かに教わったのかい?』
『やっさんが教えてくれた…』
『アンズちゃんの中にはちゃんとやっさんの教えが生きてるんだ』
『えっ…私の中に?』
『そうだよ。ちゃんと息づいてるじゃないか』
『やっさんだけじゃない、みんなに色々教えてもらった!
シゲさんには雑誌の売り方教えてもらった。
瞳には空き缶の場所教えてもらった。みんなには家の作り方とか!
他にも…他にも!』

『そうかい。人は1人じゃ生きていけねぇからな。アンズちゃんの中には大勢の人がいるんだ』
『私は…1人じゃないの?』
『これからは俺たちが色々教えてやる。そうやってどんどん増えてくんだ。それにきっとアンズちゃんもみんなの中にいる』
『私…教えてもらうだけだったよ?』
『それだけじゃないんだ。アンズちゃんと今まで過ごした思い出がみんなの中にある』
『じゃあ…じゃあ…』
良かった、深夜にひとりで観ていて。
「ヒナまつり/第6話・新田さんの父親はダンディ」
(2018年5月12日深夜BS11放送/松原桂演出)
Aパートは新田家馬鹿家族のご紹介。
ヒナと同居していることが母親にバレた新田がヒナを連れて弁解弁明里帰り。
組のアニキの娘だが、抗争に巻き込まれて母親が死に、応戦したアニキは二人殺っちまった、ヒナはショックでその時喰っていたエビチリのことしか覚えていない、というでまかせに母と妹号泣。

ま、そんな嘘がいつまでも通るはずもなく、話の矛盾が綻びて瓦解。結局、ヒナは新田の娘という事になって円満解決。晴れてヒナは新田家の一員に。
『まずはとりあえず…新しく増えた新田家の子どもに乾杯だい!』

新田妹・美佳↑。がさつ、酒乱、粗暴、女子力ゼロ。嫁にするなら新田兄。
Bパートはアンズのホームレス卒業話。
公園の違法テントが区の緑地管理課によって撤去されることに。居住を追われるやっさんらホームレス。勿論、アンズも。

居座って抵抗、駄目ならまた皆でどこかに。そうアンズは主張しますが…。
『ここらがいい機会だ。あの子のこの先の人生に俺たちはいらない』
後ろ髪引かれる別れ。アンズは詩子の口利きで來来軒の林夫妻に引き取られることに(詩子、今回はめっちゃ善人だな)。
中華屋らしい晩御飯。林夫妻にはいつもの食事。しかし、アンズには…。

『こんなご馳走一体いくらするのか…私1人だけこんなに美味しいご飯食べてていいのかな?みんなバラバラになって1人になってるのに…私1人だけ…』
朝。パジャマに布団。知らない天井。
『そっか…もう空き缶拾いに行かなくてもいいんだ。これから何したらいいのか分かんないよ』

そして冒頭の会話。
皆はアンズの中に。アンズも皆の中に…。
Aパートの馬鹿話と天地の落差。でもどちらにも「新しい家族」というしっかりした軸がある。

笑って呆れて涙して。恐るべしヒナまつり。

