
毎年恒例8月15日。今年とりあげるのは…
(2007年/新城卓監督)
脚本・製作総指揮:石原慎太郎。冒頭にご本人からのメッセージがど~ん。

てっきり自己チューを煮〆た俺様映画になっているのだろうと思いきや、これが実に淡白。
この淡白さが作品の色を薄~いものにしています。全編慎太郎節で井筒が発狂するような極彩色の面舵映画になっていれば(少なくとも私の)記憶には残ったと思いますが。
お話は陸軍の指定食堂「冨屋食堂」を営み、特攻の若者を世話し見守り続けた“特攻の母”鳥濱トメ(岸惠子)の視点による戦中戦後。
要するに岸惠子の映画です。…の割にはトメの心情が語られるわけではないので、どこまでも目撃者(そのくせ説明的台詞だけは多くて長い)。
では特攻隊に寄り添っているのかと言うと、個々のエピが軽く、カメラが中盤過ぎまで引きっぱなしなので、モブとモブがごっつんこしているだけで感情移入もできず。

戦況に関する説明がないので、日本の置かれた立場も今一つ分からず、ドキュメンタリータッチと言うのも憚られます。
大西中将が伊武雅刀なのですが軽い。信念を感じない。腹斬る時にあんな説明的台詞(俺が命じて殺した5,000の若者たちに詫びるため、俺は苦しんで死ぬのだ。介錯はいらん!)言わんしいらん。
やっぱ大西中将は鶴田浩二(「あゝ決戦航空隊」)だなあ。

最初の特攻を演出した敷島隊隊長・関行男役も「あゝ決戦航空隊」では北大路欣也でしたが、こっちでは的場浩司。軽い、軽すぎる。
戦後編はまるっと蛇足。

CG(VFX)は素晴らしいの一言(特に炎上・空中分解・四散する隼とか見事)。
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