『(ノルウェーは年中雪だが福祉国家だ)温暖な福祉国家は無い。あったら言ってみろ。天気が良けりゃバナナで食いつなげる。タイやベトナムじゃ誰も助けてくれない。日差しが福祉さ』
今回の舞台はノルウェー(はい、「処刑山」「処刑山2」のノルウェーです)。
国を挙げての血縁国家アイスランド(←すげー偏見)と違い、こっちは民族総いがみ合い国家(←輪をかけた偏見)。
『国籍は違えどあんたはノルウェー人そのものだよ』
『このセビリア野郎が』
『デンマーク人の分際で』
なんて台詞がバンバン飛び出します。香しいなあ北欧。
「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」
(2014年/ハンス・ペテル・モランド監督)
安いにも程があるタイトルです。ドウェイン・ジョンソン(ロック様)あたりが演ればぴったりな邦題ですが、主演はステラン・スカルスガルド。「エクソシスト・ビギニング」のメリン神父です。
ニルス(ステラン・スカルスガルト)は除雪車を繰って日々道路整備をしている移民(ステラン自身はスウェーデン人)。
毎日の地道な貢献が認められて名誉市民として表彰されましたが、そのめでたい夜にひとり息子が死体で発見。
死因はオーバードーズ。『若い奴らは後先考えない』と警察はハナから捜査放棄。
ショックでカミさんは精神やられて家出。
息子が薬なぞやるわけがない。もはや失うものは何もない。草の根分けても犯人を捜し出してぶっ殺す! パートナーは除雪車だ!
おお、「爆走トラック’76」か「キルドーザー事件」か、と思いましたがさに非ず。
息子を殺したのは麻薬密売ルートの親分。運び屋やってた友人がブツちょろまかしたんで巻き添えで殺されました。
直接手を下した人間からひとりずつ上司(?)に遡り、ボスをつきとめましたが、ボスは一連の報復行為を協業関係にあるセビリア人グループの裏切りと誤解。
本人意識しないところで、麻薬シンジケート双方をいがみ合わせる「用心棒(桑畑三十郎)」的立ち回りに。
ひとり殺すたびに死体を金網です巻きにして滝壺にポイ。これが荘厳な音楽と死亡者テロップ(ご丁寧に民族に合わせたシンボル付)と共に2回3回と繰り返されると、もう笑わずには…。
タイトルにある除雪車が大活躍するのかと思えば、せいぜい相手の車を何度か弾き飛ばす程度でさほどの存在感は無し。
代わりに終盤で前フリ無しに突然現れ、見せ場をさらうのが、コマツの伐採マシン「931.1」。
ぶっとい樹を掴んで切断。そのまま猛スピードでスライドさせながら枝葉を瞬間薙ぎ払い。
瞬く間に丸太にした樹木を逃げるボスの車の上にズドン。昆虫採集の蝶のように地面に縫い付けられた車は動く事叶わず。
流石コマツ。キルドーザー事件の時も言いましたがコマツに敵無し死角無し。
作中ではアップ数カットで全身像が分かりませんでしたが、これ↑が931.1です(スウェーデンにあるコマツのグループ企業「コマツフォレスト」が製造・販売)。
やはり北欧映画は味わい深いなあ…。