『さぁ!群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!』
始まった時からエピのバランス配分やら演出やらに集まっていた非難。二度と映像化されないだろうと思っていた所の3期なんだから、それだけで僥倖だろ?と柳に風で静観しておりましたが、今回はちょっと酷い。
尺の都合で詰め込みすぎたり端折ったり削ったりは仕方がありませんが、最低限の説明と辻褄合わせはしとこうよ。
「とある魔術の禁書目録Ⅲ/第14話・英雄達」
(2019年1月11日深夜BS11放送/小野田雄亮・粟井重紀演出)
英国最大の霊装カーテナ・オリジナルを手にした英国第二王女キャーリサによるクーデターとそれを阻止せんと立ち上がった第3王女ヴィリアン&上条当麻と愉快な仲間達。
キャーリサについた騎士団長(ナイトリーダー)が寝返り、後方のアックアと共闘して総力戦。それでも旗色悪し部も悪し。
ようやく正規軍ボスキャラの女王エリザードが登場。馬鹿でっかいユニオンジャック(裏面はウェールズの国旗)をはためかせてカーテナに宿る力を全英国民に再分配。
『ユニオンジャックよ!命じる!4文化から構成される連合王国を利用して集められたる莫大な力よ。その全てを解放し今一度イギリス国民へ平等に再分配せよ!』
原作ではここに『大英博物館までこいつを回収しに行くのは骨だったが』という台詞があり、前回13話ラストの『おい。大英博物館にある例の旗、準備は大丈夫なんだろうな?』『一般収蔵品に紛れ込ませたあれが霊装と気付きたるものは少ない』というエリザードとローラの会話に繋がる(文字通りフラグが回収される)のですが、まるっとカットしちゃったので、婆ちゃんその旗なんやねん状態。
正月挟んで2週のブランクが追い討ちをかけているので、理解が追いつきません。
で、イギリス国民9000万人(あー因みにイギリスの人口は2017年時点で6602万人です)に再分配されたカーテナ・オリジナルの力ですが、原作だと全国民がスーパーヒーローになるという冗談のような展開になります。
“大勢の人間が宙を舞っていた。ただの魔術師だけではない。あきらかに魔術を知らない風のメイドが10メートル以上の上空からキャーリサを狙い、残骸物質で作られた巨大な杭をスーツの会社員が叩き落す”(原作より)
この世のものとは思えぬ光景です(笑)。
確かにこんなの絵にしたら作画班は死ぬでしょう。だからと言ってバッキンガムに集まった国民が棒立ち&視線だけで加勢というのは酷すぎないか。
本来なら乱れ飛ぶ一般人を目にして発せられたはずの上条の台詞、
(すげぇな…あまりにも主人公が多すぎて俺も神裂もアックアもみんな霞んじまってるじゃねぇか。なんだよこの国。全員が主人公ってどういうことだよ)
が浮きまくっています。改竄するなら最低限の辻褄は合わせようよ。
で、一件落着した後に登場した右方のフィアンマ。まんまと目的であるインデックスを確保した…のかと思いきや、ロシアの仕事を片付けるまで管理は任せると上条に返却。
ん? お前さん、インデックスが欲しかったんじゃなかったのかい?
混乱に乗じてフィアンマが奪ったのは遠隔制御霊装(ダイヤルロックの親玉みたいな奴)。インデックスを他国に奪われた時の安全装置で、インデックスを外部から強制干渉・操作する霊装。要するにリモコンです。
一応Cパートで『奪われた霊装は安全装置だ。10万3千冊の魔導書を記憶したこの子に日常生活を送らせるための…』というステイルの台詞がありますが、分かりにくい!
ここで上条はインデックスの保護をステイルに委ねますが、原作ではこの後、上条とステイルの間で激しい悶着があります。簡単にまとめると、
ステイル:俺もフィアンマを殴りたい。座して待てとはどーゆーことだ。
上条:王室もネセサリウスも信用できん。託せるのはお前だけだ。
という不信と信頼の会話なのですが、まるっと割愛。筋追いかけるので精一杯って感じでまるで深みというものがありません。
3期の敗因はシリーズ構成が1期2期の赤星政尚から吉野弘幸にバトンタッチされた事に起因しているのではないかと。
吉野くんには小林靖子さんか花田十輝さんに弟子入りして「原作ものの再構成の仕方」を学んでくることをお薦めします。