
『私闘なのは分かっているが感情に流されたら負ける。
演説もお喋りも無しだ。ただ構え、ただ撃て』
復讐の連鎖は虚しい。が、始まってしまった以上、終わらせなければなりません。
終わらせる方法は…あります。簡単です。いずれか一方を根絶やしにしてしまえばいいのです。そうする以外、自分の身内を守る方法はありません。
泣き寝入るか、抗うか。一度返せば全面戦争。血族掃討手打ち無し。
勝ちも負けも昂揚感もない虚無という名の復讐劇。
「ブルー・リベンジ」
(2013年/ジェレミー・ソルニエ監督)
海岸近くで廃車同然のブルーのセダン(原題BLUE RUINはこの車を指しています)で暮らしているホームレス、ドワイト(メイコン・ブレア)。
ある日、彼を呼び出した警察官が告げる。「あの男が出てくる」と。
あの男、両親を殺した男が司法取引の結果、刑期満了前に釈放になる…。
トランクから僅かなガソリンを取り出して補給。外してあったバッテリーを装着して息を吹き返したセダンが廃車返上で走り出す(「マッドマックス」でV6インターセプターが発進する時を思い出しました)。

髪も髭も伸ばし放題だったドワイトが(他人の家に忍び込んで浴室を拝借して)さっぱり…したら出てきた顔がそこはかとなくロバート・ギンティに似ているじゃありませんか。
狙ったのか、単なる偶然か。
エクスタミネーターと異なるのは、ドワイトが元軍人でも元特殊部隊でもない、ただの一般人だということ。
超人的活躍など望む術もありません。唯一の支援者は高校の同級生、ベン。ガンマニアのベンが銃を調達してくれますが勿論ドワイトに射撃の経験など…(銃どころかナイフも満足に扱えない)。

復讐ものに不可欠なカタルシスをゴリっと削ぎ落していますが、それがかえって心に沁みます。

