『注文通り、肝付氏と同じ様式の一点ものだ』
As requested. Kimotsuki-styled iron. Handcrafted. One of a kind.
こんな所で肝付氏なんて名前を聞くことになろうとは。
「インフィニット 無限の記憶」（2021年／アントワーン・フークワ監督）
エヴァン・マコーリー（マーク・ウォールバーグ）は15歳で統合失調症と診断されてから、クスリが手放せない難儀な暮らし。
鏡に映る自分の顔を見るたびに襲ってくる違和感。
≪俺はこんな顔だったか？≫
ちょっとした暴力沙汰で現在無職。早く仕事を見つけないと家賃が、何よりクスリ代が…。
クスリを得る手っ取り早い方法はギャング相手のアルバイト。
何故か身体が覚えている学んだことのない刀鍛冶の技術と知識。
注文は「肝付氏と同じ様式の一点もの」の日本刀。
肝付氏は大隅の戦国大名。肝付氏の分家である薬丸家が編み出した古流剣術が「自顕流（正式名称は薬丸家伝野太刀自顕流）」。
肝付氏を名指しするとはこのチンピラギャング、学があります（にしても何故、肝付氏なんだ？）。
納品時に揉め事があって、エヴァンは日本刀を渡さず逃走。以後、エヴァンの得物となります。
さくっとお話を要約すると、エヴァンは元の記憶を保持したまま輪廻転生を繰り返す（世界に500人足らずしかいない）インフィニットのひとり。
ただ幼年期の事故による頭部損傷と長年にわたる薬物服用のため、覚醒が遅れていた模様。
インフィニットには、己の力をギフトと考える「ビリーバー」と、呪いと考える「ニヒリスト」のふたつの勢力があり、ビリーバーは人類の繁栄を模索し、ニヒリストは輪廻の鎖を断ち切るため全人類の抹殺を画策しています。
人類抹殺の道具は「エッグ」と呼ばれる超小型兵器。人類のDNAに作用して人間を組織崩壊させる悪魔の卵。
この「エッグ」をニヒリストから奪取したのがエヴァンの前世ハインリッヒ・トレンドウェイ。
その在りかは生まれ変わったエヴァンしか知らない。
という訳でエッグ争奪のためのエヴァン争奪が繰り広げられるのでした。
映像は綺麗ですしド派手な見せ場も（謎の日本語も）てんこ盛りで退屈はしませんが、やはり「マトリックス」の出涸らし感は否めず。
単なるマクガフィンでしかないアイテムにケチをつけるのも如何なものかと思いますが「エッグ」の説得力が今ひとつふたつみっつ（見た目も百均で売っていそうなマテリアルだし）。
これがエッグとその起動装置。
これそもそもニヒリストの連中が作ったんだろ。取り戻す手間暇かけるくらいならもう1回作ればいいじゃん。
科学力は凄そうだし（この漫画チックな描写が安さを上塗りしているのですが）、再生産すればエヴァンを追う必要もなくなるし一石二鳥。
この躓きが大きくて中盤以降お話に全く入り込めませんでした。
という訳で大きく視線を逸らして武器に注目。
ニヒリストのボス、バサースト（キウェテル・イジョホー）が使っているのが、インフィニットの魂を抜き出し、生まれ変わりをできなくする特殊弾丸を放つ銃。
コテコテシルバーな装飾が施してありますが、ベースになっているのはベトナム戦M79グレネードランチャー。
文字通りベトナム戦時、携帯性を良くする為に短縮化されたM79グレネードランチャーです。
書いていてふと思ったのですが、バサースト、輪廻の鎖を断ち切りたいのならこの弾、自分の頭に向けて撃てばいいじゃん。何も全人類道連れにする事ないだろう。
クライマックスはこのM79対肝付の中二病満開な機上バトル。
「ムーンレイカー」な落下アクションまでついて「魅せて」はくれますが、「なんだかなぁ」な感じは最後まで。
因みに本作、2020年公開予定でしたがコロナで延期。結局2021年の公開も断念してParamount+で配信されるという不幸な結末となりました。
★この監督の作品、実は結構観ていたりします。「エンド・オブ・ホワイトハウス」とか「イコライザー」とか。あとは、
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★本日２月10日は燻し銀ロイ・シャイダー（1932～2008）の命日。
「ジョーズ」も「フレンチ・コネクション」も大好きですが、私的ベスト3はこちら。
