釜ヶ崎と生きる…。 (秘)色情めす市場
「うちな、何か、逆らいたいねん…」
田中登監督の「(秘)女郎責め地獄」に続くマルヒシリーズ第二弾ですが、そのベクトルは真逆。
幽玄の世界から匂い立つ日常へ。舞台は大阪、釜ヶ崎(全編ロケ。一部盗撮)。
「(秘)色情めす市場」(1974年/田中登監督)
ドヤ街の売春婦トメ(芹明香)がフリー宣言をする所から物語はスタート。
14歳でトメを生んだ母よね(花柳幻舟)も同業者。種違いの弟・実生(さねお。夢村四郎)は知的障害者(結構重度)。
極貧・売春・白痴。ここまでで十分お腹一杯ですが、ここに路面電車の線路上で国定忠治の居合いを披露し続けるおっさん(勿論ホンモノ)やら使用済みコンドームを水洗いして再販しているおっさんやらが背景に溶け込んで混沌の誉れを上塗り。
トメを演じた芹明香のワン&オンリーな存在感が素晴らし過ぎ。釜ヶ崎という実在に十分拮抗しています。
街に溶け込み過ぎていて、女優が演技をしているという感覚がありません。まるでドキュメンタリー。
逆に宮下順子、絵沢萌子あたりが、安定感のある演技を披露すると「ああ、映画なんだ」と妙に安心したりします。
一応ロマンポルノですが、ヌキ所は無し。微塵も無し。そっちの期待には見事なくらい応えてくれません。脳みそが海綿体で出来ている人には間違ってもお薦めできません。
プロパンガス入りダッチワイフが爆発するシーン、在来線のすぐ脇です。爆煙が景気良く路線上に広がっています。今これやったら逮捕です。間違いなく。
登場人物は皆ネジが何本か弾け飛んでいますが、本当に弾けていたのは、花柳幻舟のその後の実人生でしょうねえ。
この人、凄過ぎです。