「ああ、笑いましたよ。晒し者見て笑っちゃいけませんか」
「そして目が綺麗だとおっしゃった」
「ええ。あんな綺麗な目、初めて見ました」
「…お蝶は、めくらでございます」
“生きている人は死んでいて、死んでいる人こそ生きているような”
「ツィゴイネルワイゼン」のキャッチ・コピーですが、本作は正にツィゴイネルワイゼンへの一里塚。田中陽造入魂の脚本を田中登監督が幽玄にまで高めたダブル田中による傑作ロマンポルノです。
「(秘)女郎責め地獄」(1973年/田中登監督)
冒頭社名ロゴはNではなくK。にっかつではなく日活。(秘)は正確には○に秘でマルヒと読ませます。
小道の石畳に直接書かれたスタッフ・キャスト・クレジット。
三味の音に導かれて進むと、そこは一発百文の最下層女郎屋“鉄砲長屋”。
おせん(中川梨絵)は、取った客が立て続けに3人も変死したため、“死神”と呼ばれ恐れられている名物女郎。
博打好きのヒモ・富蔵の計略で乞食に輪姦(絵師がその様子を描き起こす。出張モデル)されたりしても、決して泣かず気丈に振舞う江戸っ子堅気のお姐さんです。
ある日、おせんは晒し者になっている相対死に(心中未遂)の男女を目撃。
「綺麗な目をしている。きっと心も綺麗なんだろうねぇ(自虐的含み笑い)」
その横顔をじっと見つめる男。人形師・梅吉。
梅吉がおせんを人形に見立てる濡れ場の圧巻な事(分かりにくいですが写真上)。正に様式美。人間浄瑠璃。
田中登は本作で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞しました。