
『合図を聴いたか?』
『おう! 腕が鳴るぜ』
『おーい、ジョーイ! 誰をぶっ飛ばしゃいいんだ?』
『ボルティーズだ!』
『ボルティーズだと?! くそったれ!』
こちらに向かって走ってくるジョーイの後ろには巨漢・革ジャン・スキンヘッドの大集団(チーム名:ボルティーズ)。考える余地無し。ダッシュで遁走。
時代を彩ったロックンロールが次から次。
1963年。時代の変わり目も日常は賑々しく、そして淡々と。
「ワンダラーズ」(1979年/フィリップ・カウフマン監督)
冒頭、街の映画館の看板に「フェイドTOブラック」でもトリビア紹介された「WAR IS HELL」の文字が。
これだけで嫌ぁな予感がひしひしと。
ニューヨークのハイスクールは人種の坩堝。民族ごとにグループ、いやチームが形成されています。
「ワンダラーズ」はイタリアン・チーム。主人公リッチー(ケン・ウォール)の彼女の父親はイタリアン・マフィア。
どこに行っても小競り合い。でもそれはどこかキャット・ファイトに似た予定調和な役割分担のようにも見えます。
唯一、ビタ壱文洒落が通じない集団がダッキー・ボーイズ。
序盤、中盤、後半と3回登場する彼らの不気味さと言ったら…。流石カウフマン監督、彼らの登場シーンだけ「ボディ・スナッチャーズ」になっています。

イタリア人対黒人のフットボール試合にダッキー・ボーイズが乱入して来ると、イタリアとアメリカが共闘、更に超党派の中国カンフーチームが助っ人参戦。
普段どんなにいがみあっていても“外敵”が登場すれば一致団結。分かりやすいですね。

ボルティーズは酔った勢いで宣誓書にサインしてしまい海兵隊に。待っているのは10年経っても終わらない泥沼、ベトナムです。

ダラスではジョン・F・ケネディが脳みそぶち撒け、リッチーは結婚する事に。
ふと覗き見たバーに流れていたのは、ロックンロールではなく生ギターとハーモニカによるフォーク・ソング。
去る者、留まる者、ひとつの時代が終わっていく寂寞感。
松竹の試写室で観て以来実に36年ぶりの再見。当時はあのフォーク・シンガーが本人かどうかなんて事を話題にしておりましたが、別人でしたね(笑)。
カレン・アレンも出ていたんだ。ちょっと冗長なのが玉に瑕ですが、味わい深い一編だと思います。

★ご参考