「俺たちに明日はない」も「戦争のはらわた」も裸足で逃げだしそうな全身蜂の巣クライマックス(葬送の調べはレーナード・スキナードの「フリー・バード」)から14年。
どう考えても各々3回ずつは死んでいる被弾祭りを掻い潜って全員生存(嘘ぉ!)。
流石は悪魔も見放す(デビルズ・リジェクト)殺戮一家。
キャプテン・スポルディング(シド・ヘイグ)、オーティス(ビル・モズリー)、ベイビー(シェリ・ムーン・ゾンビ)の3人は大手術の末、裁判にかけられめでたく全員有罪。
そりゃそうだ。
キャプテンは死刑、オーティスとベイビーは無期懲役が宣告されました。しかし…
「スリー・フロム・ヘル」(2019年/ロブ・ゾンビ監督)
ロブ・ゾンビ監督の大誤算はシド・ヘイグの健康問題。
2019年9月初旬、ロサンゼルスの自宅で転倒して入院、療養中に睡眠時の嘔吐後、肺感染症。
とても前作の大暴れを期待することは叶わず、それどころかライオンズゲートが「シドがでないんなら製作そのものも中止」とか言い出しやがりました。
しかたなく、オーティスの異母兄弟という設定でフォクシー・コルトレーン(リチャード・ブレイク)を投入(シドは最低限の出番だけ撮って死刑執行で退場)。
これはこれで悪くはないのですが、ここはやはり父親的とりまとめ役であるシドに続投して欲しかったです。
という大人の事情を割り引いても「ちょっと期待しすぎちゃったかなー」。
若者たちがオーティスらをカリスマ的に持ち上げるなど、裁判の過程はマンソン・ファミリー事件を下敷きにしているのは明白(ポスターも「ヘルタースケルター」を参考にしている)ですが、であればもちっとシドに生と死と罪に関する演説をさせても良かったような。
オーティスがフォクシーの手引きで脱獄するくだりも驚くほど淡泊。
ここいらへん「ナチュラル・ボーン・キラーズ」との類似性が強く見られますが(所長の雰囲気とかもかなり被っている)、大暴動にまで発展した(させた)「ナチュラル~」に比べるとカタルシス無縁の冷淡さ。
脱獄時のロンド(ダニー・トレホ。前作でオーティスらに差し向けられた殺し屋)殺害も、クライマックスの伏線であるにも関わらずあっさりすっきり。
オーティス、フォクシー、ベイビーの3人だと頭の悪さばかりが目立ってしまい「狂気」に昇華しないのが何とももどかしく…。
やはりシド・ヘイグは偉大でありました…。
★1作目のおさらいはこちら
★大傑作な前作のおさらいはこちら。
★シド・ヘイグの追悼記事はこちらから。
★マンソン事件についてはこちらを。
★本日4月21日はイギー・ポップ(1947~)の誕生日(おめでとうございます!)
昨年は音楽担当「レポ・マン」でお祝いしましたが、今年は役者担当のこちらで。