矢継ぎ早に大写しになる勲章のカットにあの音楽が被るオープニングから「こ、こいつタダ者じゃねえ」感満点。
「Z」(1969年/コスタ・ガヴラス監督)
ソ連共産主義の防波堤としてアメリカの援助を受けている地中海にほど近いとある国(まあ、要するにギリシャです)。
革新政党の指導者(イブ・モンタン)が、平和集会の会場外で暴漢に襲われ死亡。
当局は自動車事故による脳出血と発表しますが、解剖の結果、議員の頭部には殴打による陥没が・・。
まるで台本があるかのように符号する目撃証言に疑問を持った予審判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)は独自に捜査を開始。
「暗殺ではない。事件だ」と言い続けた予審判事が、陰謀の核心に迫りつい自ら「暗殺」と口走ってしまう瞬間のスリル。
圧力に屈するかと思わせて次々に要人を起訴していくカタルシス(起訴する相手が付けている勲章の数がどんどん増えていく)。
男ジャン=ルイここにあり!
とは言え、コスタ・ガヴラスがそんな勧善懲悪的幕引きを許すはずはなく。
なんせ撮影時、ギリシャは軍事政権真っ只中(当然この映画は上映禁止)。
公開前年(68年)にはアメリカでキング牧師暗殺、ロバート・ケネディ暗殺、プラハじゃソ連が軍事侵攻。ハッピー・エンドなんておめでたい気分じゃありません。
タイトル「Z」は、新たに発足した軍事政権が禁止した項目一覧の最後に出てきます。
“ソ連寄りの発言、ミニスカート、ポピュラー音楽・・(たぁくさんある)・・そしてZ。それは古代ギリシャ語で「彼はまだ生きている」”
傑作だと思います。
関連:「“しかめっ面”のヒロイン登場。 ぜんぶ、フィデルのせい」
→2009年4月21日