漁師たちが朗々と歌い上げる労働歌(シーシャンティ)。その曲名にしてサビの歌詞がBlow the man down(そいつをブッ飛ばす)。
「ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~」(2019年/ダニエル・クルーディ&ブリジット・サヴェージ・コール監督)
ここはアメリカ、メイン州。漁業の町イースター・コーヴ(架空の町)。
メイン州がどこかパッと頭に浮かぶ人も少ないと思います(私は原作版「ヘルハウス」のベラスコ邸があったところという認識しかありません)。
ここです↓。
端も端。北も北。もうこの位置だけでズンドコの町である(若者はいるだけで気が狂う)ことが容易に想像できると思います。
母を看取ったプリシラとメアリー。姉妹に残されたのは客もまばらな鮮魚店とその維持のために母がした借金。
借金の担保は家(店舗兼自宅)。返せなければ家なき子。
借金と担保の件を知らされていなかった妹メアリーは激怒り&家出。
バーで知り合った男とドライブとしけこみますが、この男がちっとばかりヤバかった…。
トランクの中に女物の遺留品(血痕付き)。どう見てもついさっきまでほっかほかの死体が入っていたとしか…。間違いなく次の犠牲者は…。
嗚呼、殺っちまった…。
嗚呼、捨てちまった…。
雪国、行きずりの殺人、隠蔽、転がり込んできた大金といった共通点から「ファーゴ」を連想する人も多いと思いますが、私は土地柄という要素から「ウィンターズ・ボーン」を思い出しました。
イースター・コーヴには町を陰で支えていた女たち(ほぼ全員が老境の域)が。
プリシラ&メアリーの死んだ母もそのひとり。
お茶会を催し、手作りのパイで客をもてなす“穏健派”と娼婦宿を経営する“革新派”。かつては一枚岩だった彼女たちでしたが…。
袂を別ち対立する婆さんズ。この構図、完全に西部劇。
この婆さん達の思惑と姉妹の運命がどうリンクするのかは各自の目でご確認を。
冒頭はじめ要所要所で挿入される労働歌が実にいい感じ。
“Blow the man down”はこの映画のオリジナルという訳ではなく、結構トラッドなシーシャンティのようです(ウディ・ガスリーのバージョンとかが有名)。
ラストカットがやたら印象的な土着型サスペンスでした。
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★ご参考
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