『1発目は“架空実況”で行こうと思う。今日の番組の実況者は、自分を裏切って逃げた男をたった今、殺してきた女だ』
『なにその設定!?』
『放送開始時間は深夜3時32分。サウンドハイタイドを頭の2分で切って、前振り無しで始める。タイトルコールもスポンサー紹介もスポットCMも一切無し。ケツもぶつ切りでサウンドハイタイドに突然戻って来る。つまり放送事故を装うわけだ』
カレー屋従業員・鼓田ミナレ、深夜のラジオ冠番組が今夜始動。タイトルは鼓田ミナレの
「波よ聞いてくれ/第5話・生かして帰さない」
(2020年5月1日深夜BS-TBS放送/島崎奈々子演出)
ミナレが受け持つ時間帯はノースポンサー枠。言わば局の持ち出し企画。
『今日まで時間が掛ったのはスポンサーを探していたからじゃない。上を説得していたからだ』
スポンサーの意向を気にせず、やりたい放題し放題。
『俺は思いっきり遊んでみてぇんだよ。お前の声をおもちゃにして』
鬼か悪魔かディレクター麻藤。
『ミナレ、カレー屋の店員が午前3時ってド深夜にタイトルコールもないワンマンショーを7つの中継局を使って放送する。告知もない。何から何までイレギュラーだ。たまたま聞いてた人間の口コミに全てが掛かっている。炎上上等のつもりでやれ!』
午前3時32分。本番。恋人殺しを告白する女の呻き声と哄笑が北海道中に。
殺した恋人のモデルはミナレから50万騙し取ってバックレた須賀光雄。
何と光雄くん、ミナレの放送が始まった正にその瞬間、別の女に刺し殺されようとしていました(結局、ミナレの放送のせいで命拾いをするのですが…)。
独白を続けるミナレの前に現れた光はパトカーのライト…ではなく宇宙人のUFO。
殺しの告解が突如SFファンタジーに(ここで誰の耳にも放送が事故ではなく仕込みだと分かる仕組み)。
20分喋り倒して無事終了(しかも伏線回収してオチまでつけている)。
『お疲れさん。感心したよ』
『麻藤さん!感心する前にこれ(構成台本)なんとかしてくださいよ。宇宙人登場以降オールアドリブですよ!久連木さん(←放送作家)って私の事嫌いなんですか?なんでパトカーの代わりにUFOが迎えに来てるんですか!?』
『宇宙戦争のオマージュって言ってたぞ』
『素人にオチ丸投げしといてオマージュもクソもあるかぁ!オーソン・ウェルズに土下座しろぉ!』
ミナレさんの中の人って、「マギアレコード」(噂好きの少女A)とか「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」(ミュリンの母、女性教師、アナウンス、スタッフ、店員、女子)といった割と“その他大勢”を演っていた人。
ミナレのような屈折と勢いと勘違いと自己主張で全編喋りっぱなしの役は多分初めて。
監督、シリーズ構成、プロデューサーの中に麻藤さん的な人がいたのかもしれません。
おまけ①
現在の家主・瑞穂ちゃんの誕生日を祝うミナレ&麻藤。その帽子、どこから持ってきたんだ?
おまけ②
5話ラストカット。この絵で終わらせるのなら、是非EDは「GET WILD」でお願いしたいです。
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株式会社トーハンが制定。ウルトラ手前味噌ですが、よろしければこちらを。
「わくわくどきどきⅠ」
大野城まどかぴあ図書館 (編集)
※拙作の短編(こども審査員賞受賞)が収められております。
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