『ああ、君…。バラライカは弾けるかね?』
『弾けるか、だって。(彼女は)名人ですよ』
『君が教えたのか?』
『誰にも習いません』
『…じゃ、天分(GIFT)だな』
そう、全てはこの一言のために…。
「ドクトル・ジバゴ」
(1965年/デビッド・リーン監督)
ロシア革命前後の動乱期。不慮の死を遂げた兄ジバゴ(オマー・シャリフ)。ジバゴが妻以外に愛した女ラーラ(ジュリー・クリスティ)。
目の前にいるのはラーラの遺児かもしれない少女。
自分の姪かもしれない少女にジバゴとラーラの話を聞けせる弟(アレック・ギネス)。
しかし、全てを語り終えても少女がラーラの娘である確証は得られませんでした。
彼氏に付き添われて帰る少女の背中に思わずかけた一言。「バラライカは弾けるかね?」
バラライカはロシアの弦楽器。ラーラはバラライカが得意でした。
そうか。この一言のために3時間半という時間が必要だったのか。
ここでちょっと脱線してお酒の話。
酒飲みがバラライカと言えば、当然、楽器ではなくてカクテル。
ベースはロシアのお酒ウォッカ。これにコアントローとレモンを加えてシェイクすれば出来上がり。
以前とりあげたXYZやホワイトレディーのバリエーションですね。
このスピリッツ+コアントロー(ホワイト・キュラソー)+レモン(柑橘系)というカクテルを総称して「サイドカー・タイプ」と言います(サイドカーはブランデーベース)。
テキーラベースでレモンの代わりにライムを使う「マルガリータ」はサイドカーの兄弟分といった所でしょうか。
さて、「ドクトル・ジバゴ」で外せないのが、モーリス・ジャールによる音楽。
観る人ごとに本作のテーマ(主役)は異なってくると思いますが、私は“時間”なのではないかと。
時間(時代・歴史)の重層とうねりを「ラーラのテーマ」は見事に表現していたと思います。