中欧の(架空の)国ズブロフカ。そのオールド・ルッツ墓地に眠る高名な作家。
彼が生前(1985年)に残した回顧録。
それは、1968年8月、ズブロフカ国内のアルプス麓の町ネベルスバートにある、かつて栄華を誇るも今は寂れた「グランド・ブダペスト・ホテル」に滞在した時の話。
偶然出会った深い孤独を纏った老人。彼はこのホテルのオーナーにして国一番の富豪、ゼロ・ムスタファ。
『どんな経緯で買い取ったんですか、このホテルを』
『実は…買い取ってない』
『?』
『聞きたいか。ありのままの私の物語を』
そして舞台は1932年、最盛期のグランド・ブダペスト・ホテルへ。
「グランド・ブダペスト・ホテル」(2013年/ウェス・アンダーソン監督)
そこにいたのは試用期間採用されたばかりのロビーボーイ、ゼロとその上司にして師匠となる初代コンシェルジュ、グスタヴ・H。
グスタヴはホテルの顔。カリスマにしてカサノヴァ。縦に横に広がる人脈。
彼の元でホテルマンのイロハを学んでいくゼロ。
ここからの展開はさして重要ではありません。絵本をめくるような(時に冗談のような残酷描写が挟まれる)この世界に浸りましょう。
登場人物が皆、ヅラだったり付け髭だったり老けメイクだったり若メイクだったりと一見分かりにくい造形になっていますが、笑っちゃうくらいオールスター。
エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、そしてティルダ・スウィントン。
テイルダなんか84歳の大富豪ですよ(メイクに5時間かかるそうです)。
(左上から時計回りに)エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、
ティルダ・スウィントン、ジェフ・ゴールドブラム、
基本的な作りはコメディです。
色々あって、グスタヴさん、収監されてしまうのですが、脱獄の描写が完全に冗談。
いやいやいやそれはないだろの釣瓶打ち(突っ込んだら負け)ですが、ここ👇絶対「あなただけ今晩は」オマージュですよね。
余談ですが、ヨーロッパのホテルって水治療(ウォーター・セラピー)が基本メニューなんでしょうか(写真右は「ホテル・スプレンディッド」)。
「はい、このお話はここまで」って感じで唐突にオチをつけて終わらせてしまう強引な引き際も含めて監督の手のひらで踊らされている感があります。
実に心地良い映像体験でした。
★ホテルが舞台の「ホラーじゃない」作品をひとつふたつ。
★ついでにこんなのも如何?
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