「毎日、生きて家に帰る。それが警察官の心得第1条だ」
以前、カクテルの話をした時にちろっと触れましたが、映画そのものの紹介ではなかったので改めて。
善くも悪しくも映画的ギミック(はったりとも言う)に満ち満ちた半フィクション映画でした。
「アンタッチャブル」
(1987年/ブライアン・デ・パルマ監督)
暗黒街の帝王アル・カポネVS財務省のお役人エリオット・ネス率いるタスクフォース“アンタッチャブルズ”の死闘と駆け引き。
ちょっとググれば、映画と史実の間に相当な乖離がある事はすぐ分かりますが、史実を優先してしまっては映画として全く面白くありません。
本編ではデ・パルマの“はったり一番、史実は二番”な演出が炸裂。
映画にまず必要なのは主人公エリオット・ネスの“動機づけ”。目立ちたがりで功名心に駆られて…では主人公足りえません。
観客も納得する行動原理。最も分かりやすいのが“怒り”。
で、景気づけの意味も含めて少女大爆殺。手入れに失敗した所で、少女の母親に激励させて復活させ、アンタッチャブルズ作りの契機に。
ダメ押しでネスの妻子が危険に晒されるイベントも。これでカポネ検挙にまっしぐら、な動機づけはできました。
因みにネスが結婚したのはカポネ事件の後だそうです。
更に身も蓋もない事を言ってしまうと、アンタッチャブルズはカポネを挙げておりません。
脱税ルートでカポネを追っていたのは別働隊で、ネスは脱税捜査班を目立たせないようにするためのカモフラージュでした。
なので、税務の専門家(チャールズ・マーティン・スミス)がネスの応援に来るのは完全な嘘。でも、そうしないとネスがカポネを挙げられないので致し方ありません。
最後に困ったのが、結末。さんざ苦労しても成果はカポネの懲役11年。映画的カタルシスを味わうにはちょっと物足りません。
そこで、ネスの仲間を派手に殺して、裁判の裏側で犯人に制裁を加える(建物の屋上から突き落とす)という実に映画的なクライマックスが用意されました。
実際にはネスの運転手(正式メンバーではない)がひとり殺されただけで、アンタッチャブルズからはひとりの死者も出しておりません。
もう、カポネの有罪なんかほとんどおまけです。
とは言え、1本の映画として観るなら、ショーン・コネリーの渋かっこよさ、アンディ・ガルシアの若かっこよさ、エンニオ・モリコーネの劇かっこよさに痺れる事請け合いのサスペンス・アクションです。
個人的にはポチョムキン階段落ちシーンで、アンディ・ガルシアに1発で頭撃ち抜かれたギャングの脳漿が後方の壁にこびりついていたカットがお気に入りです。
これ、できることなら、エリオット・ネスの陰に隠れて活躍した脱税ルート検挙隊を主人公にリメイクしてもらえないでしょうか。ネスも時々賑やかしで顔を出して。
デヴィッド・フィンチャーあたりが撮れば結構面白くなりそうな気がするのですが…。
★ご参考