隣の家が芝を刈り、向かいの奥さんがピアノ叩きながら発声練習をし、近くの小学校で吹奏楽部がラッパ吹きまくるという「この世のものとは思えない」環境下での鑑賞でしたが、すっかり魅入ってしまいました。
そうか、これが市川雷蔵か。かっちょいいじゃないか。
「陸軍中野学校」(1966年/増村保造監督)
「陸軍中野予備校」は知ってるが本家は未見という恥ずかしい過去を懺悔しつつ、「古い映画だからとか、モノクロだからとか、市川雷蔵なんか知らないから、とかそんな理由で敬遠してはいけませんよ」とお説教(お前が言うな!って奴ですね)。
昭和13年に産声を上げたわが国初の諜報部員育成機関「陸軍中野学校」。その創始者・草薙中佐と一期生に焦点を当てた激シブのスパイ映画です。
公開当時は、演出のアナクロニズムとか中途半端な娯楽性を白井佳夫あたりに批判されていたようですが、40年以上経った今となってはアナクロも糞もありゃしません。
007と言うよりは、「フルメタル・ジャケット」「ハートブレイク・リッジ」あるには「ワイルド7」のハードボイルド版って感じです(そう言えば、ワイルド7の創始者の名前も草薙ですね)。
「地獄の黙示録」のマーティン・シーン、劇場公開版「ブレードランナー」のハリソン・フォードを凌ぐ雷蔵の棒読みモノローグが冷徹な雰囲気を後押ししています。