シリーズ5作目にして最終作。文字通り太平洋戦争開戦前夜の諜報合戦です。
日米交渉の妥結期限は12月1日。これを過ぎれば武力による現況打開に出る。
この御前会議の内容が連合国側に漏れていた事が、椎名(市川雷蔵)が香港から持ち帰った米英によるアジア防衛連絡会議の資料から発覚。
御前会議出席者の中にスパイがいるのか。
関係者を洗う中で浮かび上がるひとりの女(小山明子)。出会いは香港。互いに惹かれあっていたが、この恋愛感情すら駆け引きの道具。
『あなたに祖国があるように、私にも祖国がある』
諜報の焦点はただひとつ。開戦の時期と場所。
遂にその情報入手に成功した米英連合スパイ組織「P機関」。信号発信を全力で阻む諜報部。
躊躇無く銃を向け合う雷蔵と小山に痺れます。こういう湿度ゼロの演技が出来る役者さんって今いるのでしょうか。
「12月8日の開戦によって、日本はシナ大陸から更に遠く、太平洋へ、そして東南アジア諸地域へと拡大された戦線に、米英両国を敵として、その歴史の過酷な運命を担ったのである」
相変わらず朴訥も棒読みも素通りした雷蔵のモノローグが渋すぎます。
『私の次の任務は? それは神ならぬ私たちには知る由もなかった…』
本作終了後の68年6月、雷蔵は直腸癌に倒れ、翌69年7月、逝去。2年後の71年、大映が倒産。椎名に次の任務が下される事はありませんでした。