『トカレフ…あります?』
『…あるけど』
原作が物凄ぉく好きで、映画化なんか絶対不可能だと思っていた分、評価のハードルがぐーんと低くなっております。
「昭和歌謡大全集」(2002年/篠原哲雄監督)
おばさんとオタクのグループが、ふとしたきっかけから殺し合い、大殺戮戦へ発展していく夢一杯のファンタジー(え、違う?)。
原作はブレーキの壊れたダンプカーのように滅茶ぶつけ爆走するストーリーを村上龍の筆致で乗りこなす“初めに文体ありき”の大破綻文学です。
文体のリズムを映像に焼き付けるのは無理だろうと 思っておりましたが、なかなかに魅せる画作りになっておりました。
原作ではあまり有効とは思えなかった“昭和歌謡”が いい感じに機能しています。
『原爆…ある?』
『…あるけど』
原作では、原爆(正確にはFAE―燃料気化爆弾―。貧者の核兵器)の作り方を伝授するのは、トカレフ売ってくれた金物屋主人とは別人なのですが、ここは原田芳雄に統一して正解(でも、できればこの役は沢田研二に演ってほしかった・・)。
松田龍平が作ったFAEは、着地時に高気圧燃料が瞬 間気化して、時間差で着火するタイプのように見えましたが、実際には空中投下時に気化・拡散して一定高度に達すると着火するタイプになっていました。
随分と高度なもの作ったな、龍平。
爆発前後の双方生き残り数が原作と違うのは瑣末な事なのでどうでもいいですが、オチ(ラストカット)が中途半端になってしまったのがちと残念。
多少の不道徳感には眼をつむって、原作と同じ超不謹慎ポジティブなオチにしてほしかったと思います。
おばさん達は皆好演(ふーみん!)でしたが、不気味な女子大生役の市川実和子が頭抜けてました(写真中右)。