核戦争後のアメリカ。世界でただ1冊残ったある本を“約束の土地”に運ぶ為、ひたすら西に向かって歩き続ける男の話。
「ザ・ウォーカー」
(2010年/アレン&アルバート・ヒューズ監督)
アメリカ人が後生大事に抱えている本が何であるかは観る前から分かります(よね?)。
なので、そこいらへんは引っ張らず、前半でネタは明かし、これを踏まえた上でラストにちょっと捻ったオチがある構成はなかなかに「お上手」です。
原題は「The Walker」ではなく、「The Book Of Eli」。
イーライは本を運ぶ主人公(デンゼル・ワシントン)の名前。
Eliの後にjahをつけると紀元前9世紀のヘブライの預言者エリヤに、shaをつけるとエリヤの後継者エリシャになります(作者の意図は知りません。念のため)。
イーライの得物はマシェット(今はスペイン語のマチェーテの方がポピュラーか)。“ソード・アクション”を謳っていますが、刀と言うよりは肉斬り包丁を振り回している感じ。ブレイドのような華麗さはありませんが、骨肉を絶つ力強さがあります。
イーライの運ぶ本は、核戦争の原因になった(←多分正解)として戦後焚書され、唯一灰になる事を免れたウルトラ貴重本。
この本を「人民の心を掌握し、思うように操る武器(←ある意味正しい)」と考え血眼になって探している男カーネギー(ゲイリー・オールドマン)。
実に哲学的かつ宗教的。冒頭で朽ちた都市がバリバリのCG合成で出てきた時は「あ~あ、またかよ」でしたが、お話が進むにつれ、あまり気にならなくなりました。
あとは何を書いてもネタバレになっちゃうので、筋書きの話はここまで。
カーネギーの情婦役で何とジェニファー・ビールスが! 「Lの世界」とかは見ていないので、久々のご尊顔(「呪怨」以来か)。
63年生まれだから撮影当時45~6歳ですが、まだまだイケます。
ちょっと「デスペラート」におけるサルマ・ハエックな雰囲気も醸し出していて(アクションはしませんが)いい感じ。
合理的に考えると理屈に合わない描写がてんこ盛りですが、楽しめる一編ではありました(ひょっとして「スピンオフな続編」でも作りたいのか?なラストカットは「何だかなぁ」でしたが)。