「マリアッチなんかいらん。うちにはフル・オーケストラがいるからな」
出てきたのは最新式シンセサイザーと下手糞なプレーヤー。
高価な機械を持ち込んでも弾き手がヘボだからヘッポコピーな音しか出ない。それでもオーナーは得意げだ。
生ギター1本でオリジナルのラブソングを唄ってやんやの喝采を得るマリアッチ。つまりはそういう事です。
「エル・マリアッチ」(1992年/ロバート・ロドリゲス監督)
制作費7,000ドル(ざっくり80万円)。「デスペラード」の元ネタ兼前日譚。
ギターケースにサブ・マシンガンを詰めた黒尽くめの殺し屋・・に間違えられた流しのギター弾き(マリアッチ)の物語。
冒頭、ヒッチハイクもままならず灼熱の一本道を歩くマリアッチとすれ違う一匹の亀・・巧いなぁ。この亀に導かれて映画の世界に入っていくようです。
バーの女オーナー、ドミノ(「デスペラード」のサルマ・ハエックの役回り)が飼っている押井守・・じゃない犬もいい感じ(ほとんど動かないくせに眼の動きで演技してやがる)。
マリアッチが繰り返し見る悪夢が、なんの伏線にもなっていないのはちと不満ですが、余計なものが何もない剝き出し感が心地よい快作です(デスペラードが虚飾まみれに見える)。
DVDには特典として「ロバート・ロドリゲスのフィルム・スクール」が。
1台のカメラと2本のレンズ、2つのライトで如何に印象的な画を作り出すか、金をかけないとはどういう事か、本作を教材に僅か10分でレクチャーしてくれます。
更にオマケでロドリゲスの自主短編「BEDHEAD」も(←サイコーです)。
監督の音声解説も入って実にお買い得な1枚です。