『ちょっと待ってくれ、俺はやめないぞ。何がくだらない事だよ。ここで止めたら俺たち何だ? ただの馬鹿じゃないか。ここまで作ったものを全部捨てちまうつもりかよ。今日の今日までやってきた事だぞ。くだらないなんて悲しいこと言うなよ、立派だよ、皆、歴史の教科書に載るくらい立派だよ。俺まだやるぞ。死んでも上がってみせる!』
溢れる情熱と玄人裸足のテクニックを武器に結成された素人集団GAINAX。
この1発を打ち上げて華麗に解散するはずでした・・が。
「王立宇宙軍 オネアミスの翼[97年サウンド・リニューアル版]」(オリジナル1987年/山賀博之監督)
地球とは異なる文化・文明を持った“もうひとつの地球”。「宇宙に行く」という正気の沙汰とは思えない目的のために組織された王立宇宙軍。
シロツグ・ラーラット中佐(森本レオ)は、中流家庭で育った“貴族の不幸も貧乏人の苦労も知らない、知りたいとも思わない”平凡・ノンポリな青年。
どこを探しても“やる気”の欠片すら見いだせない彼が、史上初の有人宇宙船パイロットに志願しちゃったから、さあ大変(きっかけは、街で布教ビラを配る少女に一目惚れした事・・実に軟弱)。
本格始動する有人宇宙船打ち上げ計画。成功する見込み無しと判断して、隣国「共和国」の軍事介入の誘い水として利用しようとする政府上層部。シロツグを狙う隣国の刺客。
果たして打ち上げは成功するのか・・。
本作は、ごく一部を除いて全編手書き。
発射時にロケット本体から崩落する氷(超低温の液体酸素によって氷結した外気)の細かさ・・これを手書きって・・よく発狂しなかったな(スペシャル・エフェクト・アーチスト:庵野秀明)。
印象的な音楽は坂本龍一先生ですが、岡田斗司夫によると「少なくともメインテーマは坂本さんの作曲ではない」んだそうで。
DVDには劇場公開時オリジナル音声に加え、5.1chサウンド・リニューアル版、更に英語吹き替え版を収録。グイッとボリュームを上げてリニューアル版を観る(聴く)事をお薦めします。
さて、この素人集団によるでっかい打ち上げ花火、宣伝費込みで総経費8億円。そして興行収入3億4700万円(Wikipediaより)。
本作で背負った借金返済のため、解散する事が出来なくなったGAINAXは、本作不振の原因―SFアニメなのに、メカも巨乳も出てこない―を払拭し、メカと巨乳と努力と根性と萌えをあらん限りぶち込んだ「トップをねらえ!」製作に突入する訳ですが、それはまた別の話。