デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

イカすお調子者、その名は鴨井大介。 宿無し犬

イメージ 1

主演が「白い巨塔」の田宮二郎と「非情のライセンス」の天知茂、ヒロインが女賭博師シリーズの江波杏子で、監督が「必殺シリーズ」の田中徳三

どんだけハードボイルドなんだよ!と勝手な期待を膨らませたら、出てきたのは関西弁が雑踏の隙間を泳ぐようにすり抜ける“お調子ボイルド”でした。

「宿無し犬」(1964年/田中徳三監督)

一匹狼で喧嘩に強く女にモテモテ(全部自称)なトッポイ兄ちゃん鴨井大介(田宮二郎)。

彼を利用して暴力組織・須賀組の壊滅を目論むしょぼくれ貧乏刑事(天知茂←役名無し)。

舞台が関西という事もあって台詞はどれも丁々発止(脚本:藤本義一)。

ヒロインは江波杏子ですが、作品のカラーを決めている鍵女は賑やかしの坂本スミ子

「生娘? ウチそんな不潔な女やないで」

ラブ・ホテルの客室係(事情があって副支配人は鴨井)でしたが、不審火でホテルが全焼するや肉体資本・元手無しの商売に鞍替え。

ドヤで代金未納のオヤジをシバいている時に鴨井と再会。

『あら、副支配人!』

『なんやお前パン助になったんか?
 (オヤジに)払ったりぃや』

『逆さに振っても鼻血も出んで』

『(間髪入れず鴨井に)逆さに振って』

文字にすると面白くありませんが、間が絶妙。

「犬」シリーズは全部で9本作られていますが、全てに出演しているのは田宮以外では坂本スミ子只1人。

江波が“クール過ぎるにも程があるビューティー”なので、坂本の愛嬌が際立つ1本になってしまいました。

にしても若い頃の天知の劇画顔は何かが滴っているな(どんなに貧乏くさい格好をしていても三枚目にならない)。