デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

全部不合格なのに総合で合格。 君よ憤怒の河を渉れ

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『こんな奴、百発ぶち込んだって正当防衛なんだよ』

無理があるにも程がある脚本、サスペンスを盛り上げる気がさらさら無い演出と編集と音楽・・ひとつひとつは全部駄目なのに合体すると何故か合格…。

映画の方程式は難しい。

君よ憤怒の河を渉れ(1976年/佐藤純弥監督)

謂れ無き強盗・強姦容疑で追われる身となった検事・杜丘(高倉健)。

自分を犯人と証言した女を追って北海道に入るも、女は既に死体。殺人容疑まで加わった杜丘は日高山脈へ。

ここで熊に襲われている牧場主の娘・真由美(中野良子)を助けた杜丘は彼女に匿われますが、すぐに警察が…(しかし逃げながらも洞窟で1発ヤル事は忘れない)。

もう全編不思議が一杯。

まず「第三の男ハワイアン・アレンジ」な音楽が変。わざとだと思いますが、本来ならサスペンス感溢るるシーンがこの1曲で全部漫画に。

北海道を完全封鎖された杜丘は、牧場主(大滝秀治)の自家用セスナで日高山脈越えして千葉海岸沖まで超長距離飛行。

勿論、セスナの運転は初めて。このセスナを追うのが三沢をスクランブル発進した自衛隊戦闘機。検事正(池辺良)曰く「警察の威信をかけて」。いやいやいや、そこで自衛隊はないだろ。

これを海上すれすれの低空飛行でかわして最後は胴体着水。すげー運動神経です。

前年の「新幹線大爆破」、翌年の「人間の証明」、翌々年の「野性の証明」(全部、佐藤純弥だ!)と大作イヤーが続くウルトラ健さんだから許された離れ業。

千葉から大月を経由して非常線をかいくぐり、新宿まで戻ってきましたが、刑事+機動隊連合軍(刑事は人混みで銃乱射!)が完全包囲。窮地の杜丘を救ったのは…。

真由美率いる暴れ馬軍団!!

新宿駅西口で馬大暴走! 一頭はコーナーで景気良く転倒(アスファルトの上走らせたりするから)! ジュラルミンの盾を強行突破!

無茶苦茶です。しかし、映画的選択としては大正解(理屈より絵柄優先。ただし、この後の中野良子のヌードがあからさまな吹き替えだったのは残念無念)。

杜丘を追う矢村警部に扮した原田芳雄が、健さんに負けず劣らず魅力的。

悪の総帥に西村晃。役者の濃さが、画面を救っています。

余談ですが、中野良子は翌年の「八つ墓村」でも洞窟(鍾乳洞)でセックスしてましたね。洞窟マニアなんでしょうか。

★ご参考