デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

その女房、凶暴につき。 ストライク・バック

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「父が言っていた。“獲物が凶暴なら自らも凶暴になれ。獲物以上に”」

旅先で 道に迷って外灯に
誘われ来れば 狂い人迎えん

ホラーの鉄板“トゥーリスト・トラップ”。

大抵は、巧妙な罠で誘い込まれた善良な一般人がなまら酷い目に遭うというのがパターンですが、今回はちぃっと毛色が異なります。

何が違うって、犠牲者が強すぎるのよ(笑)。

窮鼠猫を噛むというのもこの手の常套ですが、その思い切りの良さに於いて本作は他の追随を許しません。

「ストライク・バック」(2007年/ジェイミー・ブランクス監督)

検事のロブと芸術家のピア(ナディア・ファレス)はヤッピー夫婦。

ボートで釣りを愉しんで、マングローヴを一周しようとしたら、浅瀬から用水路に迷い込んで一方通行出口無し。

陽は落ち、雨降り始め、黒雲立ち込めて事態は最悪。

陸に上がったら道も街灯もなく本格的迷子。

お、あそこに民家の灯りが。農家だラッキー。あそこで電話を借りよう。誰もいないな。裏口が開いている。ちょっと雨宿りさせてもらおうか。おっとこっちにはでっかいハウスが。何栽培してんだろ…おお、これは見事なマリファナじゃないか…ってマリファナ!!ヤバイ、ヤバイでえ。こりゃとっとと退散しないと…。

「そこで何やってんだテメエら!!」

ザ・最悪。ワイルドな異母兄弟とゴジラ並みに乱暴な父。ロブは脚を折られピア共々納屋に監禁。もはや生きて出られる望み無し。

「だったら皆殺しよ!」

釣った魚を殺すのを見て「残酷だわ」と言っていたピアが、納屋にある様々にもの(専ら工具と釣り道具)を使ってハンドメイド・ブービートラップ博覧会。

自らの体にも凶器を仕込み、準備は万全。かかってこい、田舎物。都会人の狡猾さと残酷さを思い知らせてやる。

ここに家族のペットである血に飢えた人喰い犬まで加わって混沌と殺戮のサンバ。

後半はホラーに欠かせないSEである“悲鳴”がほとんど聞こえません(いや、加害者側の悲鳴は聞こえるか…)。

冷静沈着に得物を仕留めていくハンターの如く、嫁が暗闇を疾駆する。

いやあ、嫁にするならフランス人の芸術家ですね。