『愛が欲しいなら(彼女を)追えよ。手に入るかもしれないぜ。しかし、俺がお前に与えるものはもっと希少なもの…名声(fame)だ』
80年代ロックの凄い所は、たとえ初めて聴いた曲でも「あ、これ80’sだろ」と分ってしまう個性でしょう。
“パーティ・ロック”とか“産業ロック”という呼称で蔑む向きもありますが、この決して他の年代と交わらないワン&オンリーな存在感は特筆に値します。
「ロック・オブ・エイジズ」
(2012年/アダム・シャンクマン監督)
80年代。ハリウッド。この地を踏む男女の夢は勿論、歌手、そしてロック・スター。
田舎から出てきたシェリー(ジュリアン・ハフ)は、ライブ・ハウス“バーボン・ルーム”でウェイターをしているドリュー(ディエゴ・ボネータ)の口利きでウェイトレスに。
ドリューらがレコード店で歌う“ジュークボックス・ヒーロー”と、バーボン・ルームのオーナー、デニス(アレック・ボールドウィン)らが歌う“アイ・ラブ・ロックンロール”が同時進行していく序盤は結構ツボ(好きなんです2曲とも)。
そしてバーボン・ルームにやって来たカリスマ・ロッカー、ステイシー・ジャックス(トム・クルーズ)。
若人たちも頑張っていますが、本作の見せ場はやはりトム・クルーズ。
アクセル・ローズをお手本に1日5時間×4ヶ月半のボイス・トレーニング。
かつての勢いは無く、ヒット曲にも恵まれず、疲れ、病み、ささくれだった剥き出しのカリスマ・オーラを全身に纏ったロックの英雄。
こういう役を演らせるとトム・クルーズは本当に巧い。
「マグノリア」の恋のカリスマ伝道師(「誘惑して押し倒せ!」)、「トロピック・サンダー」のカリスマ・プロデューサー(ハゲ)。
二の線を惜しげもなく捨て去った(しかし結果的にカッコイイ)キャラ造型の時、トムは本領を発揮します。
“好きなように生きる自由”と“不自由を選択する自由”。
ホワイトスネイクの「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」、スコーピオンズの「ロック・ユー・ライク・ア・ハリケーン」といった選曲が嬉しい(ついでにNKOTBを思いっきり小馬鹿にしているのも)。
いささか回りくどく、冗長な感じがしなくもないですが、80`s好きなら観て損はありません。