一定年齢以上の人にとっては、アラン・ドロンと言えばダーバン、ジュリアーノ・ジェンマと言えばトロージャンという紐付で記憶されているのではないでしょうか。
ジェンマがまだモンゴメリー・ウッドを名乗っていた時代の出世作。
「荒野の1ドル銀貨」
(1965年/カルヴィン・ジャクソン・パジェット監督)
タイトルからの想像通り、胸ポケットに入れた1ドル銀貨のおかげで九死に一生という1発ネタ。
時は南北戦争終結後。南軍として参戦し捕虜となったゲイリー・オハラ(ジェンマ)と弟のフィルも晴れて解放。但し、返却された銃(SAA)は銃身を切り落とされたスナブノーズ状態。
南部にはもう居場所がないと諦めたフィルは西へ。妻の元に帰ったゲイリーは、3か月後に後を追う(旦那は仕事探し、妻は家の売却)事を約してフィルの後を。
イエローストーンの町についたゲイリーは町の顔役・マッコリーの依頼で、悪漢ブラックアイの逮捕に協力する事に。
しかし、ブラックアイの正体はフィル。兄とは知らずゲイリーに銃弾を撃ち込むフィル。正当防衛だとばかりにフィルを蜂の巣にするマッコリー一味。
二人とも死んだかに見えましたが、ゲイリーは胸ポケットに入れた1ドル銀貨(フィルがゲイリーに託した貯金の一部)のおかげで生きていました。
フィルが悪漢などであるはずがない。本当の悪党は誰だ…。
何を今更ではありますが、アメリカ国旗の下で、北軍と南軍がイタリア語で会話をしているというのは違和感半端無いですね。
人間、髭があるかないかだけで人相変わるようで、髭を剃ったジェンマをマッコリーがゲイリーと見抜けないのは分かります。
脚本は「いやいや、そりゃおかしいだろ」「何故、そんな事をする?」という所が多々あり“突っ込み祭り”ですが、銀貨やら銃身切り詰めたSAAやら小道具の使い方が巧いので、見ている間はそんなに気になりません。
SAAスナブノーズは、銃としては使い物になりませんが、プロップ・レプリカがあれば欲しいかも。
むしろ気になったのはジェンマの動き。運動神経抜群と言われるジェンマですが、器械体操の動きとガンマンの動きは少々違うようで、妙なぎこちなさが目立ちました。
何より、ガン捌きを観て「おお、かっちょええ!」とならないのが致命傷。
あと個人的に駄目だったのが、ヒロインが奥さんという設定。
やはり、マカロニなら男は流れ者、女は娼婦か才覚ひとつで成り上がった叩き上げであって欲しいものです。
余談ですが、ジェンマのデビューはワイラー版「ベン・ハー」(の端役)。
ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)が最初にメッサラ(スティーヴン・ボイド)に襲撃をかけた時の衛兵はすぐに分かりましたが、族長イルデリム(ヒュー・グリフィス)のそばにもいたんですね。