世間的に高評価とは言い難い本作の魅力は『無慈悲』。これに尽きます。
(1979年/ジョン・フランケンハイマー監督)
製紙会社が森林を購入しましたが、ネイティブがこれに反対して一触即発。
その森の中で行方不明者続出。犯人はネイティブなのか。
冒頭、行方不明になった伐採作業員を探す救助隊3名が夜の森林を駆け抜けるシーンが秀逸。風の音と犬の唸り声と人の息遣いだけで緊迫した空気が伝わってきます。
彼らがロープ1本で崖を下るスピードが速い。手馴れていて躊躇いがありません(本職?)。
工場側、先住民双方の意見を取りまとめる調査員ロブ(ロバート・フォックスワース)とその妻マギー(タリア・シャイア)が工場側の案内人イスリー(リチャード・ダイサート。「物体Ⅹ」のドクター・コッパー)と森に行ったらジョン(アーマンド・アサンテ)率いるネイティブ軍団が「通さん!」。
イタリア×アイルランドのアサンテがネイティブってのは無理がありますが、かっこいいから許します。
川には巨大鮭やら50cm級オタマジャクシやらがう~ようよ。
やがて製紙工場から水銀が垂れ流されている事が分かり…(水俣の名前も出てくる)。
水銀は体内、特に胎児に蓄積し畸形を…。気づいた時はマギーらもたらふく川の鮭を喰った後。
マギーは妊娠中。この恐怖は半端ないです。更にどろどろに畸形化した熊の赤ちゃんを発見(ほとんど物体X)。これと同じ様なものが私の中にも…(妊婦さん鑑賞不可)。
森林汚染の“証拠”として、そのどろどろ熊を我が子の様に抱きかかえるマギーの姿はかなりタチの悪いブラック・ユーモアです。
そして現れる巨大どろどろ親熊。当初はキマイラっぽいデザインだったようですが、監督が「もっと熊っぽくしようぜ」と言い垂れて変更させたんだとか。
ポスターアートはその時の(元デザインの)名残りのようです(ヘッダー写真参照)。
さて、熊の目から見れば、白人もネイティブも、森を守る人も壊す人も、女も子供も老人も等しく攻撃対象。実に公平かつ無慈悲に殺戮しまくります。
特に子供を寝袋ごと岩に叩きつけて木っ端微塵シーンと老人咥えてぶんぶんぶんのシーンの無慈悲さと言ったら…。
何ひとつ解決しないまま終わる投げっぱなし感も素敵です(前年の「ゾンビ」の影響でしょうか)。